soujiの長文用

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副業として大人向け数学教室を一か月やってみて

副業としての大人向け数学教室を始めてから早1か月たちました。
最近なにが本業かも自分の中でもよく分からなくなってきましたが。

私の経験値稼ぎ名目の無料体験授業もいくつかこなし、現在週1,2回ほど教えています。

今回は1か月やってみて、どのようなことでお客さんの数学学習の役に立てるか、どうすれば自分が無理なく続けられるかが少しわかった気がするのでまとめみます。

 

もともとは微積分・線形代数以外の大学以降の数学には対応しないつもりでした。
なぜなら私自身が自専攻以外の数学に対してテキトーなことを教えてくないですし、自専攻以外の専門家を雇うほどの規模にはしないつもりでした。
しかし個人的には大学以降の数学の方が楽しいと思ってますし、それの楽しさに味わってもらう方が良いのではないかとずっと思っていました。

ただ例え微積分であっても60分も講義しようと思えばかなり準備が必要になります。
もし何人ものお客さんを抱えることになれば、私の本来の活動に支障がでてくると考えました。少なくともしばらくは副業でやると決めてます。

 

また以前、数学科でない知り合いに微積分を授業形式で少し教えたことがあるのですが、授業している最中は理解しているかのように見えるんですが、説明した定理を使った別の定理の証明などをやってもらうとまったく進まず困ったことがあります。

教えた数学の定理は理解してもらえたみたいですが、それを使って新しいことを証明したりするという、その後の数学を自身のみで勉強する能力は身につかなかったみたいです。もちろんそれは私の教え方が悪かったのもありますが、やはり授業形式で一方的に教えるだけでは教えたことも初学者の中では活きにくいのかなと思いました。

 

そこで参考にしたのが数学科のセミナー活動です。
数学科以外の方に簡単に説明すると以下のような感じです(裏難波大學数学教室用文章からコピペしました)。

「大学の数学科では大抵3から4年次において学内の研究室に所属しセミナー活動というもので単位をとることが多いです。
その際の指導方法とは各学生に対して教科書ないし論文を指定し、
定期的に研究室に集まり指定された文献を数ページ予習してきて教員含めた複数人の前で発表するというものです。
本来指導を受ける立場である学生が先生役となって、教員やその他の学生・院生の前で授業をするような感じです。
この際、発表役学生の準備とはその文献の読み込みであり、これは単に”読んでくる”だけでなく証明に穴があるもしくは証明が記載されていなければ証明する、必要な補題があれば同文献または他のものから探してきて証明する、具体例が乏しいものは自分で見つけてくるなどかなりのことが要求されます。
それ以外の教員・学生・院生の役割は、発表学生の話す内容を聞いて数学的な間違いはないかを注意深く探し、内容に不明な点があれば例や証明の詳細を要求するなどになります。
特に文献は研究室を持つ教員の専門分野と近いものが選ばれることが多く、教員からの質問・発言が1番に発表学生にとってためになることが多いです。
発表担当学生が準備不足だったり発表内容に当人の誤解が含まれていた場合は1行も進めずに終わることも多々あります。
このセミナーの意義は発表を通して自分で理解できたと思っていたことでも間違っていることに気付いたり、受けた数学的な質問に対して答えようとすることで理解が深まること、聞く側に回った場合でも他者の証明に対して質問し数学的なやりとりをする練習になることです。」

 

この形式で私が指導教員役(つまり聞き役)を、お客様には発表担当学生の役をやってもらえればお客様のより深い理解につながり私自身の準備時間にあたる負担も少なくなります。

 

先ほど述べた通り、お客様の成長具合をどのようにして測るのかも悩んでいましたが、
このセミナーでの発表の仕方や振る舞いなどで(数値化は難しいですが)判断できると考えました。


これによって当教室の目的を単なる「数学の学び直し」から「数学を自学自習できるようになってもらう」に変わりました。
いつまでも分からないことが出るたびにお金を払ってもらうより上記のような能力を身につけ、他の数学学習者と数学的交流がとれるようになることが一番お客様のためになると考えました。

 

しかし、上記にも書いてある通り発表側が数学に慣れていないとセミナーとして成立しにくく、数学科卒だからといって上手くセミナーを進められるとは限らないのでその技術を初学者に求めるのは酷だと思いました。

 

このような方法を思いついた後、実際に微分積分を学んでみたいと申し込みされたお客様(すでに何回か授業済み)にセミナー形式について説明し、上記の手法を取り入れることを了承してもらいました。
そしてまずは素朴集合論セミナーを私が発表側としてやっていくことにしました。
素朴集合論は現代数学を学ぶうえで必須です。
どのような分野に進んでも、素朴集合論で身につけた証明のやり方や知識は必ず役に立ちます。
微分積分セミナーをしてもらうにしても、素朴集合論とその中の証明になれていけば、極限・微分積分などの理論的理解に対する証明もこなしていけると思っています。
これは学部生時代に大学数学の自習で詰まってしまった時の自分がやったことにもつながります。
つまりもう一度、基礎的な数学の定義の理解を深めてきちんと証明できるようにしてきました。
なので数学科卒のセミナーのお手本として、どのように考え、どのように証明を組み立てていくのかを毎回かなりゆっくりじっくりお見せしていってます。
いくつかの証明は宿題として残し、次回の授業で私に対して証明を目の前でやってもらっています。
その中でちょっとずつ助言をしていくことで証明の組み立て方・書き方・発表の進め方を身につけていってもらえればと考えながら進めています。
今後の展望では徐々に発表する比率を変えていき、そのお客様がやりたいと言っている微積分学に必要な知識が揃うのと同時に、先生役を交代できるようにしてきたいです。
仮にある時点でお客様が私を不要と判断して受講を終了したとしても、目標である「数学を自学自習できるようになってもらう」をお客様が体感できたということで良いと考えました。

 

私自身が数学の楽しさに目覚めた素朴集合論を通して、かなりマニアックな需要かもしれませんがしばらくはこのように進めていこうと考えています。
それに素朴集合論から発生する疑問は私自身の専攻分野の公理的集合論にも通ずるところがあるはずですから、発展的な話題も提供できると思っています。

中高の数学をすっとばして、素朴集合論といった数学から学び始めるのはスプートニク・ショックのような結末を迎える心配があるかもしれません。

スプートニク・ショック - Wikipedia

上のリンクの「アメリカ政府の政策変更」の3番を参考に。


しかしそれは公教育としてだからであって、本教室が対象としている数学をじっくり学びなおしたい大人の方に向けてでは経験者が傍についている限りでは十分に効果がでると考えています。
私自身が「高校数学は苦手だったが大学数学から学びなおした(数ⅢCでほぼ0点の私が、なぜ数学を好きになれたか - soujiの長文用)」というような道を歩んできたからこそ、自分と同じような道のりで数学が好きになってもらうこと・そのために自分が意識してきたことを伝えることがすでに大人向けの数学教室が数多ある状況で私がやる意味も出てくるとも思いましたし、今後に活きてくると考えました。

おしまい。