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企業の会議室をお借りして数学講座を開きました

さる2019年10月、企業のオフィスを借りて大人向け数学講座を開きました。
今まで個人レッスンの形で大人向け数学教室を運営してきましたが、それも1年半以上の経験を積み「そろそろ挑戦してみようかな」と思えるまでにいたりました。
このブログではどのようなものだったかを動機と経緯、そして内容、そして実際の参加者の感想を用いて語り、
反省点、その改善案、そして今後の展望を綴りたいと思います。
なので以下の6つの項目から構成されています。

 

動機や開催までの経緯をもう少し

 

そもそも数学教室の運営初期から、個人レッスンではなく講座で受けたいという要望はいただいていました。
個人レッスンの方が個人の理解度に合わせて一歩一歩確実に進んでいけますが、そのメリットの有る無しに関わらず、座学的に一方的に受け身に話を聞きたいという意見も理解できました。
よくよく考えれば自分も大学生の頃、この先生・もしくは授業内容ならば一方的に受け身で指導されたい、この授業では積極的に発言していきたいなど、その内容によってどのように学んでいきたいか変わることがありました。
なので個人レッスンでの指導能力の向上とは別のスキルとして、講座の設計などのスキルを伸ばす機会が欲しいなと思っていました。

 

問題は場所の確保です。
どれくらい人数が集まるかもわからない状況で、それなりに人数が入る場所を用意するのは金銭的に難しいです。
もし集まり過ぎた場合でも、そしてまったく集まらなかった場合でも困ります。
なのでこれまでのイベント同様、貸しスペースを借りるのではなく、タダで使える場所を探すことを目標としていました。
しかしそんな場所は誰が探そうが簡単に見つかるわけではありません。
色々とそういうイベント開催経験豊富な知り合いに聞いてみたところ、その開催理念によっては企業がその会議室を無料で貸してくれることがあると教えてもらいました。
調べてみれば関西の中でも、ゲーム制作会社がプログラミングをテーマとした外部者主催の勉強会のため会場を貸した事例を見つけました。
たしかにゲーム制作にプログラミングは必須ですし、会社にとっては自社で勉強会を開いてくれれば楽なことこの上ないでしょう。
その事例にも、貸す条件としてその会社の社員が参加できるものであることが挙げられていました。
つまり、会社に見返りやメリットなどを提示できればタダで会場を借りることができそうです。

 

そのころ、まだ両親の立ち飲み屋を手伝っているころでした。
お客さんの年齢層が高かったので、経営に関わっている人も多かったです。
そんな人たちにどのような数学講座なら会社の会議室を貸してもいいと思えるかなどなど、お酒を提供する合間に聞いてみてました。


また夏ごろに経営トップ層に裏難波大學の活動をプレゼンする機会が回ってきました。
他のプレゼンターは起業した・したての若者といった感じで、こっちは法人でもなければその予定もないので完全に場違いでしたが、「まぁやらないよりはマシ」くらいの気分でプレゼンしてみました。
そのオファーは前日の昼とかに急に来たので、すぐに5分間のプレゼンを仕上げましたが、今にしても思えば、それくらいすぐに説明用資料が作れるくらいには、自分も活動の意義などが明確になってきていたのかと感じました。
そこでプレゼンには企業向けの数学講座の企画中である内容を盛り込み反応を見ることができました。
そこから興味をもった社会人の方がこんな数学講座ならば是非是非うちでやってほしいと意見をもらえました。
しかしどのご意見も抽象的でした。
そもそもよくあるマナー研修とかなら企業側も依頼実績も体験数もたくさんあって要望も具体化されていそうですが、数学を扱ったものとなると想像ができず抽象的になるのも仕方のないことだと思います。
例えば「一般社員が数に強くなるように」という意見がありましたが、どのような状態が「数に強くなった」のか全くわかりませんでした。
もうすこし掘り下げてみると「数字が羅列された表やグラフを見て何かしらを気付く能力」だそうですが、それは果たして数学を教えることで身に付く能力なのか(個人的にはデータサイエンス寄りの能力のようにも思える)、そして何を教えることでそれがスキルとして身につくのか、そして私がこれまでやってきた数学の能力とどう関係があるのか、じゅうぶん考えてみても分かりませんでした。


少し脱線しますが、サラリーマン時代に新入社員向けITリテラシー研修というものがありました。
私が新入社員の頃は開発部署の課長(その時の私の上司)が対応していました。
そして2年目にして、私が教える側を担当することになりました。
その会社はかなりロジカルで数字で考える癖のついた社員が多かったので、これを私に与えられた仕事と捉えたとき、
その成果をどう数字で表現できるのか悩むことになりました。
そこで仕事帰りの本屋さんにて以下の本を衝動買いします。

『研修設計マニュアル: 人材育成のためのインストラクショナルデザイン
Amazonのリンクを貼っておきます。

www.amazon.co.jp

これは研修設計がテーマでもあるわけですが、研修担当者がいかに社内にてその存在や功績をアピールするかなども書いてあり、私がどのようにこの上司からの依頼に答えることができたのか表現するために役立つと思い色々と実践してみました。
研修という成果の数値化が難しそうなことでもやれることはあることを学べたのは良い経験でした。

ここから何かを指導するにしても、その目的設定とそれに向けての行動について色々と考えるきっかけになり、例えばその後の後輩のゼミ指導や、もちろん大人向け数学教室という個人レッスンにも活かされています。

 

話を戻すと、これからやる講座にしても完璧に数値目標を設定するのは難しくとも、講座を受けてどのような効果があるのかはある程度明確に説明できるようにならなくてはいけないでしょう。
しかしその視点で見ながら参考になるものはないかと、ネットで既にある大人向け・社会人向けと名のついた数学講座なるものを色々と調べてみました。

他には統計や機械学習といった流行りものがテーマのものまで意外とたくさんあります。
しかしどれもあくまで題材は高校数学+αくらいで、目標設定もよくわかりません。
資格取得のためならゴール設定もそれまでの内容もある程度具体的ですが、やはり単なる学びなおしや数学能力向上を目標としたとき、これで妥当なのかどうかも自分の中ではハッキリとしません。

 

また高校数学を題材とするならば、私が大学にて学んだ多くのことが役に立ちそうにもないなと思いました。
私が大学からどのように学んだかは以下のブログを参照してください。

souji0426.hatenablog.com

 

裏難波大學という団体のコンセプトが大学の中にある学問の啓蒙を目的としているので、高校までの数学を扱うのは少し軸がズレているとも感じました。
もちろん高校までの数学をきっちりやることも大事なことは確かですが。
なのでやはり大学以降の、できれば自分が一番楽しかった数学をテーマにしたいと考えていました。
また他の数学教室なり法人がやっている内容を真似しても、後追いになるだけとも。
せっかくやるのだから、内容的にも自称数学得意な講師なら誰でも良さそうなものでもなく、表面上は企業受けしそうなものでもなく、自分の専門性をある程度活かしたものに挑戦し、失敗するなら大いに尖った内容で失敗しようと考えました。

 

よって決まった内容はやはり「数学を学ぶ」ことのイメージが変わるようなもの、数学が単なる暗算・計算得意な人たちだけが挑むべきものでなく、数学書を読むだけなら訓練と時間次第で、文系理系関係なく誰だって出来るようになることを伝えられるものが良いではないと考えました。
これは普段の大人向け数学教室という個人レッスンでずっと意識していることです。
私は一人っきりで4年くらい多くの時間をかけて、数学書が(それなりに、まだまだ下手くそなことも多いですが)読めるようになりました。
別に後悔しているわけではありませんが、もし環境が良ければ・私の努力する方向をより早く修正できれば、もっと早く・もっと高い次元でそのような能力は身に付いたと考えています。
それが関係してか(そうであってほしいと思いますが)私が個人レッスンで教えたとき、そのお客様は半年から一年である程度正確さで数学書が読めるように、さらに証明が書けるようになっています。

つまり私よりも断然早く数学ができるようになっています。
私の宣伝ポイントはそこにあり、それこそこれからの講座にも活かすべきだと考えたものです。
そして単なる数学勉強ハウツーならば、実は本でもネット上の情報でも探せばたくさんあるのですが、それを羅列するだけでは退屈でしょう。
例えば練習試合形式を伴わないサッカー練習が楽しくなさそうに見えるのと同じです。
やはり何かのスキルを身に付けたらそれを発揮する場もセットで提供したいです。
そして勉強方法を伝えるにしても、何かの目標に向けてやらなくては、その講座を構築することも、その内容が部外者から見ても妥当であることを伝えることも難しいでしょう。
非数学系でない人にこの内容が妥当であるかどうか伝わることが私は大事だと考えています。それは、また今度の裏難波大學の理念を説明する記事にて語ることにします(もう書き始めて3か月以上経つ。。。)。


大学以降の数学にて基礎となるのはやはり(素朴)集合論です。これは数学科の1,2年で必ずカリキュラムに組み込まれていることからも分かります。
もちろん微積線形代数も大事なのですが、それについてより深く理解するためにも集合論への理解度は高ければ高いほど良いです。
単なる計算の仕方以上に微積線形代数を理解しようとすると証明を追えることは必要不可欠だと考えていますが、そうなると証明能力はどのように鍛えるかということになります。
意外と微積線形代数の証明に必要な知識って多かったりします。
実数に関する知識(たまに実数の公理から始まるテキストもあるし)や代数学に関する知識(たまに体論(代数学)から始まるテキストもあるし)から始まっていれば、まず最初にそういったものから積み上げていく必要に迫られますが、そうなるとそれなりに抽象数学になれておく必要を感じます。
そしてこれらの基礎になっているのも現代では(素朴)集合論です。というよりもそれを基礎として展開できると言えます。
つまりにどんな数学をやるにしても(素朴)集合論から始めるのが、遠回りに見えて一番の近道だと私は考えています(し、私だけがこう考えているわけでもないと思います)。
また(素朴)集合論もやりようによっては前提知識をかなり減らすことができます。
大学から新たに始まる数学ということは、それだけ高校数学に依存していない証拠でもあります。
ただし数や図形といった、これまで想像がしやすかったものがメインの対象でなくなりより抽象的になるため、論理が今まで以上に重要な武器になります。
だから、どのような論理で考えるべきかとか、それをどのように定義の理解やその証明に活かすかを盛り込む必要がありました。
そして(素朴)集合論も、集合・写像二項関係(からの順序関係・同値関係)・集合族といった風に細かいコンテンツに分かれ(本によってはもっと増える)、この後にどのような数学をやるかによって必要なものは変わってきます。
全部やるのは無駄が多い(そんな時間もない)。
よって先ほどの理由以上にこの講座の内容的な明確なゴールを設定する必要がでてきました。


そこで設定したのは「連続体仮説」です。
連続体仮説は数学の中でも際立った歴史を持つテーマの1つだと思っています。
通常の数学(と思うことができる標準的な公理系)から連続体仮説は「その肯定も否定も証明できないこと」が証明されています。
どんな数学的命題も真偽がハッキリする、そしてそれこそが数学の最大の特徴であるかのように考える人にとってこれほど驚きがあるテーマはないのではと考えました。
(もちろん数学の捉え方次第で、この歴史的事実の捉え方もまた変わりますが、それは数学者の管轄外の話で、そのような思想や哲学を持ち込んだとしても、この証明が無意味というわけではありません。)
「その肯定も否定も証明できないこと」の証明は独立証明と呼ばれていますが、これの理解まで行くと大学院レベルとなるのでさすがに難しい。
多分数学科生相手にしても6回とかの講義では到底足りないでしょう。
でも「連続体仮説がどのような問題だったのか」を説明するだけなら、必要な(素朴)集合論的知識もそんな多くありません。
また連続体仮説は私の(公理的)集合論という分野における重要なテーマの一つであり、単なる微積線形代数よりも私にとってふさわしいテーマであり、かつこのテーマを歴史的な視点も踏まえて解説できる人材は、数学科全て含めてもそう多くありません。
ちなみにその理由は私がそれにたどり着けるだけ他の人より数学に秀でているからではなく、単にこれについて学べる数学科が少ないからです。
先のブログ記事にも書いた通り、私はこの数学が学びたくて大学院進学を決めています。

よって「連続体仮説の主張そのものの理解」をゴールに設定し、そこにたどり着くまでの証明の中で「数学を勉強すること」と「証明とはどのような営みか」について考えが変わるような内容にしました。


ただ基本概念を細かく丁寧に説明すればするほど、証明に割く時間が短くなります。
なので講義中で証明したかったもの、もしくは理解に役立ちそうな簡単な定理を演習問題として組み込み、講座とは別に演習時間を設けて、その中で証明中心に解説することにしました。
本当はだれか演習問題を解いてきた人に前に出て発表してもらい、それを全員で検討するような、それこそ大学数学科内における演習のようなものにしたかったのですが、今回は解いてきた人は現れず。。。
かっこよく言えばアクティブラーニングですが、それの運用方法についてはまだまだ自分には知見が足りなかったようです(あと感想から察するに単に問題が難しかった可能性も高い)。
この証明の添削は、個人レッスンの中でも非常に効果の高い仕組みだと自負しています。
添削というのは、単なる言葉遣い・記号や記法の訂正から、より分かりやすくなる工夫や証明法の提案、そして論理の整理、分からなかった箇所があればそれをヒントを与えつつ一緒に埋めるなどなどをすることを指します。
手本のような証明を知るだけなら検索や情報収集が上手くなれば可能ですが、自分が書いた証明を正しいかどうか、もしくはどれほど正しいか、誰かに直接訂正しコメントをもらえて、より良い証明へ昇華する機会は、大学の外にはなかなか存在しません。
ゆえにこの個人レッスンの良さを主張するときに、この添削というサービス・仕組みは必ず入れるようにしてます。
そのエッセンスを、この講座にも取り込もうとした結果が、この演習という仕組みになります。

よって私がやりやすい、そして数学の基礎として相応しい、そして数学科に進学しなければ知ることができない珍しい・貴重な(自分で言うなというツッコミはさておき)テーマを選択し、私のこれまでの学習歴・指導歴を活かせるような形式を採用しました。


しかし、このコンセプトが出来上がった時、「一体どこの企業がこのような講座のために会議室を貸してくれるだろうか?」と不安になりました。
先ほどの懸念に戻れば、この講座を受けた社員がその日以降に何か業務内容や効率がよくなったりするでしょうか?
もし、これがきっかけで数学学習が習慣となり、論理的に考える癖が今まで以上につくようになれば、つまり中長期的に見れば効果はあると言い切れますが、これも私の手を離れた後の話なので、後後その効果について実感するのも難しそうです。
まとそのような能力向上があったとして誰しもが上手に言語化し上司や周りの人に伝えてくれるとも限りませんし。
だからこそ数字で表現できるのが一番手っ取り早いのですが、これも今すぐは難しそう。
最後にテストみたいなものをやらせてみても、それはその問題について暗記しただけかもしれないので、数学について何か理解が深まった証拠にはなりづらいのではないかと。


少し愚痴っぽくなりますが、このような問題ってTwitterでもよく見る大学で身に付いた能力をどのように企業にアピールするかという問題と同じ難しさがあります。
ITや経営・経済とか、その企業に業務に直結するような分野(統計学・工学や医学・化学)でもなければ説明はかなり難しい。
とくに人文科学系や理論科学系は、なかなか業務に結び付けづらいし、結び付けしてみようとしても単なる就活生だと業務内容を詳しく知らないので難しい。
だから意識が高い人ほど、このような分野は生きていく上では役に立たないという意見との戦う機会がたくさんある。
その戦いがめんどくさくなればそういうことと戦わなくてよい世界へ行くか、あえて戦ってみるか(でもそのような戦いから得るものは逆に大学の中では役に立たなかったり)の二択。
今回自分は戦うのは分が悪そうだと感じ、最初からこういったどちらかという教養教育に興味のありそうな(すなわちこちらとしてもある程度説明が楽になりそうな)経営者を探すことにしました。
それこそネット上で社内に数学部を作った事例など、社員の業務に直結しない部分での教育に理解のある会社もあるとは知っていたのですが、私の周りには見つからず(というより経営者の知り合いって増やそうと思って増やせるものではないですよね)。

そんな折、昔新入社員の時に社外研修で出会ってその後飲み友達になった知り合いに相談したところ、その彼が勤めていた会社の社長ならば教養について理解があり、部屋も夕方以降ならば開いている可能性が高い、そして嬉しいことにアクセスが良い(阪急梅田駅から徒歩10分以内)ということで紹介してもらいました。
その彼も含めて会社に赴き、その社長と打ち合わせをさせていただき、上記の内容を短く簡単にまとめた企画書を提出し、無事開催できる運びになりました。

 

長々と書きましたが、ここまで開催までの経緯です。
まとめれば業務に直結しない教養的な内容で、それに理解ある社長に出会うことができたというただそれだけです。
ただそこまでの流れを自分が後々、この時の設計思想を思い出しやすくするためにまとおきました。


形式・進め方

 


形式としては無料のガイダンスと講座計6回からなります。
ガイダンスは、その先が有料でもありますしその内容やその意図を説明して納得してもらうために開きました。

それについては実際の申し込みページが詳しいので、リンクを貼っておきます。

kokucheese.com

上の経緯でも書いた通り、第2回目以降の会には任意の演習が付いていてそれに参加するかどうかで金額も変わります。

この料金設定の理由としては、普段4500円で教えているので、それよりも一人あたりは安くなるように設定しました。
なぜなら個人レッスンでは60分の真剣勝負で毎回内容も変わりますが、これはある意味決めた内容を繰り返すだけなので(定期開催できるようになれば)自然と準備にかかる時間も減ることから、安く設定しています。
まぁこの頃はコロナのことなんて全く予想できていないわけですが。

 

内容と工夫・意図したこと

 

内容は上記のリンクに書いてある通りに進めました。
あまり詳しく書き過ぎちゃうと、実際に講座を受けた人たちが不利になるので控えます。
それに数学をキチンと学んだ人からすれば、この講座内容だけで、どのような話をしたのか大体は分かってしまうと思うので。

では、工夫や意図したことを3点ほどあげます。

 

1つ目:写像集合論的定義


(素朴)集合論は数学の基礎になっているということを実感してもらうための工夫です。
公理的集合論を学べば、ほぼ全ての数学概念が集合や集合論の記法を用いて表現できることが実感できます。
このほぼすべてには一見集合っぽくない、関数や(自然)数も含まれています。
さすがに自然数を集合で表現するのはやりすぎな気がしたので、関数(もっというと写像なのですが)を集合で定義できるところを見せて、集合の表現力の高さを感じてもらいたいなと思いました。
関数を単なる対応規則だとする方が分かりやすさは上がるのですが、集合論の後に別の数学に進んだとして、例えば関数一つ一つを要素として扱うような構造や、より抽象的な関数(関数を関数に移す関数とか)が出てきたりするので、それが出たときに関数ってなんだっけ?と悩むよりは、集合論的にキッチリと定義しておく方がいいのかなと思いました。
しかしこれについていくつか反省すべき点もあるので、それについては後述します。

 

2つ目:小話を挟む


これは90分以上の講義・講座・研修をする人が大体やっていそうですが、毎回間に5分から10分の子話を挟みました。
単なる息抜きやアイスブレイクとかではなく、数学に関係したものをチョイスしました。
どのように関係したものかというと、数学の分野の大まかな全体像や、数学科でのカリキュラム、そして数学科におけるゼミ活動の内容など。
とくに後半二つは直接数学に関係あるわけではないですが、数学科の様子から「数学の勉強の仕方」の参考になることがあるのではと考えました。
また数学書・論文の輪読を行うゼミ活動の大事さを伝えることで、誰かと証明を題材に対話することも理解への促進になることを伝えました。
大学でのカリキュラムや指導方法は何も教員たちの思いつきでやっているわけではありません。
その学問なりの理由があります。
なかなか他の学部の様子を見る機会はないと思います。
これも実際の数学科生(つまり私のこと)が講師を務めることの一つの利点だと考えました。

 

3つ目:ほとんど歴史の話だった第6回目

 

第6回目は、ほとんど歴史の話でした。
第5回目の最後までに目的の「連続体仮説の主張を解説」という目的を達成しておいて、第6回目はそれがどのように数学(とくに数理論理学・数学基礎論において)の中で発展していったかの解説でした。
これは目的よりは逸脱した内容ですが、啓蒙を意識する自分として必ず入れておきたいものでした。
公理的集合論の誕生から、不完全性定理まで(簡単にですが)解説し、単に「独立」だったとだけ説明するにしても、「何から独立なのか」とか「独立であることはどれだけ珍しいことなのか」まで含めて説明しなければ、何かその先の数学において誤解が生じるかもしれません。
実際ここらへんの独立性問題や不完全性定理は、初学者とか関係なくかなり誤解が生じやすい範囲で、Twitterでも半年に一度くらいは燃えます。
証明はしたことがなくてもその主張や使い方を正確に理解するにはそれなりに数理論理学や数学基礎論での経験が必要です。
そういった経験無くして語ると、なるべく日常言語的な語りで説明しようとし、結局数学的にも正しくない解説が出来上がります。
その経験が普通の数学科生に比べても自分にはあります。
それで90分も時間があれば、完全に数学的なものとはならなくとも、間違ってはいない(後に本人にとって悪影響を与えなさそうな)解説はすることができます。

これがいき過ぎた自信にならないよう今後注意しておかなくてはいけないとも思っています。
また時間に余裕があったので、これらがどのように間違って引用・理解されやすいかも説明してました。
ここらへんは、自分が数理論理学を学び始めたときのハマってしまった落とし穴を埋めるような気持ちで導入しました。
でももしかしたら少しおせっかいだったかもしれません。
でも数学学習をこの講座でだけで終わらせないためには、なにか発展的な分野への案内が必要だとも思いましたし、私が提供できたのはこういった話題でした。

もし私が解析学専門ならそれに関する発展的な話題を付け加えたでしょう。


啓蒙ってその言葉の意味からも、どうしても上から目線なものになりがちですが、
そうであったとしてもこちらが数学について教養が付くようにと意図した結果になっています。
何度も言いますが、連続体仮説不完全性定理について専門家・もしくはそれに近い人(自分がこれに当てはまる)から直接話が聞ける機会は少ないです。
動画投稿サイトにあるものを20件ほど見てみましたが、ほとんどが(わかりやすく説明しようという工夫なのかもしれませんが)数学的に間違っていました。
完全に正確に説明したら難しいのは仕方がないとして、どれくらい軟化させて話すかのさじ加減については、私なりに自信があります(というよりこれから啓蒙を志す以上なくてはいけないです)。
分かりやすければ多少間違っていてもOKという主張には私は全面的に反対です。
間違わずに、与えられた時間の中で、どれだけ丁寧に、なるべく多くの人の分かりやすく説明するか、そのスキルを自己批判も取り込みながら伸ばそうとするからこそ啓蒙活動家ってなれるのかなと考えています。
今後も他の活動に関しても、そこは意識しながら多少高度に難解になってしまったとしても挑戦していきたいと思っています。

 

感想

 

ここでは実際の参加者より頂いた感想文をコピペして載せていきます。

参加者には公開することと、良い点悪い点自由に書いてくださいと伝えてありました。

書き方や文字数などがそれぞれ違うのがその特徴でしょうか。
提出されたものには性別や年齢が記載されていましたが、先日作成した新しい情報公開方針に則り、感想文のみ載せていきます。

souji0426.hatenablog.com


また感想文の順序に特に意味はありません。

世にある様々な数学の個人レッスン・講座って、感想文(あっても数行程度)がなかなか公開されていなく(企業の方針もあるのでしょうが)、その内情がなかなか、興味をもった人から見えにくいのではないかと考えています。
私にとって良いものも悪いものもとくに取捨選択せず載せていくことにします。
改行はこちらで適当に入れさせてもらいました。
発見した明らかな誤字脱字も訂正してあります。


感想1つ目

 

この度は、このような機会で勉強させてもらい、毎週とても楽しくワクワクする時間を過ごさせてもらいました。
常日頃から大学以降の数学を勉強しなおしたいと思っていたもののなかなか良い機会が無かったので(私は数学科を卒業したのですが、学生時代は理解しきれなかったところが多く、社会人になってからも数学を勉強しなおしたいとずっと思っていました)、このような講座があると知ったときはすぐに申し込みをさせていただきました。

講座では大学で学んだ内容を具体例を沢山交えて話をして下さったのでとても理解しやすく、私の学生時代もこのように教えてもらえたら理解度も変わっただろうなと思って受講していました。
私以外の参加者の方のほとんどは大学で学ぶ数学を勉強すること自体が初めての方のようでしたが、そんな方でも分かりやすいように、話をしてくださっていたと思います。

全体を通して有意義な時間でした。また他の分野(数学以外でも)でこのような講座が開催される際には参加させていただきたいとが思います。
とても楽しかったです。ありがとうございました。

 

感想2つ目

 

今回の数学講座を受けてみて「数学のイメージが変わりました。」

高校の数学は方程式やグラフを使って求めることが多かった。
今回の数学講座を受講して、方程式やグラフを使わなくても「数学」ってがあるんだと気付きました。
今回学んだ内容「証明」は初めて見る記号が沢山出てくるため、覚えることに注力しました。
そこで覚えた記号を読み取り、自己流の証明を作っていきます。

しかし、実際に証明してみると、どこまで定義をして良いのか分からず、途中で講義に追いつくことが厳しくなりました。
毎回、宿題が出るのですが、そこで講義で分からなかった箇所を復習してみるのですが、やっぱり数学は難しい、、と思いました。
学生の頃と比較してみて、理屈が分からないまま授業が進んでいくことがありましたが、今回は雰囲気だけでも掴むことが出来るまで苦とは感じませんでした。
一回、受講してみるとイメージが変わるかも!

 

感想3つ目

 

難易度は高く感じましたが非常に有益であったと思います。
論理的に証明を組み立てる手順のエッセンスを知ることができました。

定義を押さえ、仮定を漏れなく検証するという証明の過程を知ることは今後自らが物事を論理的に(数学的に)捉える能力を鍛えていくための良い道筋を示して頂けたと考えています。

一般的には実務的な題材では無かったかもしれませんが、普段業務にてプログラムやデータベースを扱うエンジニアである私に限って言えば、それらのテクノロジの裏にある理論を理解するうえで必要となる集合論の言葉遣いを学べたことは直接的にも有意義でした。

ただ、欲を言えば課題の解答解説は毎回セットでご提供頂ければありがたかったかなと思います。
内容を出来る限り都度定着させてから次に進みたかったですが、それは叶いませんでした。

今後ともこういった社会人向けの講座の機会があれば是非参加させて頂きたいと思います。

 

感想4つ目

 

裏難波大學では、集合論を学びました。
最初に証明に講義内でつかわれるであろう記号から覚えていき、実際に記号を使った計算式を書いていきました。
証明問題なので書き方のコツとか、まとめ方、解き方のコツはあると思うが、一人でその証明を解いていこうと思うとかなりむずかしく、一人で解くことができないと感じました。
問題の解説も復習のために欲しいと感じました。
また、数学書を読めるようになったかと言うとそれはまったくわからないです。
今までにフェルマーの最終定理は読んだことがありますが、当時はかなりむずかしく感じていて、再度読み返してみようとは思っています。
この講義自体は普段触れることがない分野だったので、とても有意義な時間を過ごすことができました。
大学でうけるであろう講義を割安な値段で受けることができるのもかなりの強みだと思います。
無限という概念を考えることは人生においてほとんどないと思うので少しでも興味があるならば受けてみてはいいのではないかと思いました。

 

感想5つ目

 

・講座で学んだこと、講座を受けて良かったこと
集合論という今まで知らなかった数学を知ることができてよかったと思います。
今まで発見された定理を使用してパズルを組み合わせるように正しいこと(正しくないこと)を導いていくところを見させていただいて少し面白さを感じました。(理解不足で雰囲気でわかったつもりになっただけですが)
証明に取り組めば、論理的な思考、筋道たててものごとを考え伝える力が身につくとも思いました。
また数学者の小話も知らない世界を知れて興味深かったです。
 
・理解度について
本講座の目的である「数学書が読めるようになる」からすると、理解はあまりできていません。
課題の数をこなして身についていくものだと思いますが、課題を自力で解くことができませんでした。
初学者としては課題の難易度が高く、もう少し簡単な課題もあったら復習が取り組みやすかったかもしれません。

 

感想6つ目

 

今回、数学講座を受講して良かった点及び改良いただけると嬉しい点を記載します。

良かった点
・大学で受講する講義と同等、もしくはそれ以上の内容
今回受講するにあたって説明を受けたレベルを満たしており、また説明等も懇切丁寧であったと感じています。
事前知識がない者であっても、とっかかりのある内容でした。
講座の合間のブレイクタイムで、興味をそそる小噺があったこともプラスに働いていると思います。
数学が単純に問題を解いて、答え合わせをする学問ではないことが充分に伝わる内容でありました。

改善点
・個人の力量に依存している進度
講座のスピードに関しては異論ありませんが、課題や演習などでもう少し工夫いただけるとより良くなるのかなと感じました。
特に、課題をどうやるべきかがわからないまま演習を迎えたために、一方的な演習形式になった印象があります。
講座でかなり丁寧に証明の説明をいただきましたが、それを基に新しい証明を課題とすることは難しく、
写経→穴埋め→誘導問題→証明
のように順番に思考を慣れさせていくことが良いのではないかと個人的には感じています。
複数人から課題の答えの要望があったと記憶しておりますが、初めから証明の答えを与えることはあまり利にはならないと思います。
まずは手を動かさせて、数をこなさせることで少しでも身につくのではないかと考えております。

社会人向けということで学生で感じる部分と異なる点はいくつかあります。
しかし、当人が理解し、自ら学べることを目指す点は同じだと思います。
この点に更にフォーカスを当てブラッシュアップをしていくことで、より多くの方がこの講座を通して数学の楽しさに気づき、満足していただけると思います。

 

反省点と今後の改良方針


反省点は挙げればキリがありませんが、まとまったものを3つほど挙げます。

 

反省点1つ目:演習問題の難易度調整ミスと配布が遅れたこと


感想文にもありましたが、難易度が高いとものが多かったようです。
1,2回目の演習問題では証明問題の方針のみを考えてもらい、3週目以降で実際に証明してもらうようなものに設定しました。
意図としては、まずは証明の目的(すなわち証明するべきことを定義に戻って記述したもの)をハッキリさせなければいけないと考えたからです。
例えば他人のゼミ発表を聞いていて、グダグダになってしまう時はそもそも発表者本人が証明すべきことを明確にできていないことが多いと思っています。
なのでいきなり証明を問題として出すのではなく、証明の目的だけを答える問題を出してみました。
しかしこの意図が適切であったかどうかを判定する以上に、問題の選択が、つまり難易度調整に配慮が足りなかったようです。
なるべく基礎的なものを出そうと心掛けましたが、基礎的であればあるほど、論理にまで踏み込んで説明しなくてはならないものも多く、それを講座内で網羅することも時間が足らず、演習問題の解答が補足も入れてかなり長くなってしまいました(つまり逆に分かりにくくなった)。
例えば「空集合はどんな集合に対しても部分集合になる」は約束事として理解すればそんなに難しくないものの、
実際に定義に戻って証明しようとすると、集合論の話というようりは論理の話に近づきます。
出題する問題は、ある程度講座内容を決めている段階で、これくらいは(そこまで説明を要せず簡単に)私が解説できるだろうとふんで出題したわけですが、
これが完全にミスでした。
出すのが悪いのではなく、それに対して答える用意をもう少し十分にする仕掛なりなんなりする必要があったと思います。
演習問題の解答は各講座終了後に私自身が解いて配布する予定でしたが、「これまで講座で話した内容から逸脱し過ぎず説明するか」に悩んで配布が遅れました。
それなりに冗長になってしまったものの、最終的には全て解答を作成し配布しましたが、もし演習問題の難易度や解説のしやすさにまで配慮して、各回ごとに配布していれば、受講者の理解力はさらに上がった可能性があります。
この講座中だけでも家にて一人で数学の勉強を楽しんでもらうための仕掛けが演習問題・宿題なわけですから、
これの内容選定にも講座と同じくらいに知恵を絞る必要があったと思います。

 

反省点2つ目:「前提知識の少なさ=簡単さ」ではない


自分は大学入学して初めて本格的に数学を勉強し始めて、(素朴)集合論の基礎的な範囲内での抽象的な議論にそこまで抵抗なく付いていくことができました。
これは私自身の振り返りでは前提知識の少なさが関係していると考えていました。
もちろん授業を聞いているだけで理解したわけでなく授業時間外にも色々と本を読んだりしていましたが、それだけやれば何か特別な理解力なんてなくとも誰でも理解できるものだとしていました。
しかし本人のやる気に関係なくいきなり抽象的なものを誰でも理解できるわけではないようです。
例えば講座終了後にとある数学科大学教員の方の話を聞いた話だと、「空集合」と「空集合のみを要素とした集合」の違いになかなか気づいてもらえないそうです。
ちなみにあまりに理解してもらえないから、この類の問題は出題しないことに決めたそうな。。。
振り返ると自分は大学生時代に授業でこれを聞いて、この二つの集合が違うことにすぐに気づけましたが、誰でもそうではないということに驚きました(不遜な言い方で申し訳ありません)。
この二つの集合を定義するための前提知識はほとんどありません。
だからといって理解が簡単ではないということに今更ながら気づきました。
普段個人レッスンで教えていて、初学者にとって難解な抽象概念は、要素関係の複雑さが上がる直積集合やべき集合だと思っていたので、それに対しての例えや解説は配分を増やしてみたのですが、それよりも前にある話でも人によっては抽象度が高く理解まで時間がかかってしまうものだったようです。
この講座が初学者向けであることの理由として、前提知識の少なさをアピールしたのですが、それだけではダメだったようです。
前提知識が少ないことは確かにそうなのですが、故にその少なさをもう少し活かす仕組みがあれば良かったです。

 

反省点3つ目:配布資料の作り方


これは聴講者に向けてではなく私個人に向けた反省なのですが、今回講座に向けて作成したものは、話す用の原稿(講座では軽く確認する程度)と、配布資料と、スライドと演習問題の解答の主に4つでした。
小さなものとして最終回以後に配った参考文献リストなどがあります。
全てlatexを用いて作っています。
それぞれの違いを説明すると、原稿には上で説明した子話なども書き込まれていたり、口頭で解説したいことを話し忘れしないようにメモしたりしています。
配布資料は、原稿からすぐ上で書いた私向けの部分を除いたものになっています。
スライドは配布資料をそのままドキュメントクラスをslideに変えたものですが、見やすさへの配慮で位置調整をしたり、一枚のスライドに移る文字数を調整したりと、配布資料のソースファイルからはかなり手が加わっています。
どれだけ注意しながら作っていても、誤字脱字などあるもので、それが発見されたら、
まず原稿を修正し、配布資料とスライドの該当箇所も直すわけですが、配布資料への変更は容易ですが、スライドの修正がめんどくさかったです。
なぜならスライドはソースファイルも見づらくなってますし、説明のしやすさを上げるために同じ個所を二度以上写すなどしてましたから、一つの修正点に対して変更箇所が複数あることが多く、それの見落としがないか確認するのに苦労しまいた。
完璧な原稿を作っておいて、それを下地にして配布資料とスライドを作っておけばよいのですが、なかなか理想通りにはいかず。もう少し作り方を工夫しておけば手間も減り、演習問題の解答作成の時間も増やせただろうなと思います。
今のところ、先に原稿をある程度完璧に作るくらいしか対策しか思いつきませんが、この時の資料を再利用する方向で考えてみます。

 

これ以外にも細かな反省点は多々あります。
それに対して現時点で考えている改善策は以下の2つです。
もちろんこれ以外にもメモしているものはありますが、次回の講座において大きく変わる部分のみ書いておきます。

 

改善点1つ目:時間の変更


反省点その2への対策は、時間を増やすことだけです。
この講座の前半で論理式を導入しました。
日常言語のまま、あやふやな記述をしてしまっては自分で間違いに気付くことも難しいのではと過去の経験から考えました。
世間にたくさんあるεδ論法の解説が、量化子を伴った論理式の読み解き方にほとんど注力しているところを見ると、やはりまずは論理記号に、そして論理記号の読み書きにどれだけ慣れるかが、障害の一つではないでしょうか?
もちろん論理的に考えることと、論理記号に慣れることはイコールでないことは承知してます。
でも、これがあるからこそ曖昧性を排除して、数学だけに集中できるようになれるとも思っています。
ただ数理論理学的に論理式を厳密に定義すると、かなりの脱落者が出るので、ここでは厳密性は諦め、適当な定義で済ましました。
例え数学をそれなりにできる人相手でも、数理論理学的な論理式の定義は初見ではなかなか難しい印象があります。
ただ厳密であるにしろそうでないにせよ、日常言語の論理式への翻訳、またその逆翻訳もすぐに身に付くものでないことも分かりました。
一応それに類する演習問題も入れていたのですが、反省点の1つ目にあるようにもう少し素朴な例から簡単なものも取り上げておくべきでした。
そしてある程度その翻訳やそれを用いた証明の理解などに割く時間を増やしたいと考えています。
以前に公理的集合論勉強会を企画・運営しましたが、やはり難しいのは導入、そして基礎知識の展開なのでしょう。
そしてこれ以上内容を削ることも難しそうなので、時間を増やす方向で考えていて、今が全6回ですから、それが7か8回にすることで調整しようと思っています。
前半以外のところは、概ね今のままで良いと考えています。

 

改善点2つ目:演習問題の難易度調整


これはすぐに思いつく、そしてやるべき改善点です。
やはり記号に慣れるまでもう少し丁寧に進めるべきだと思います。
講座に付随する演習時間も、今回は証明という作業が始まってからでしたが、それ以前から始めて、しっかりと調整した演習をキッチリと答えていく時間も必要です。
また1つ目の改善点より講座日程が増えるならば、付随する演習も増やすことができます。
そして演習は任意参加のため参加しない人もいるかもしれません。
その人でも流れについて来れるような演習問題を上手く用意したいです。

 

今後の展開


上で挙げた点を改善しつつなんとか会場を確保しながら続けていきたいです。
今回会場をお借りした企業も引き続き会場を借りることに了承を貰っています。
ただその企業の営業日の都合上、土日は借りることができません。
やはり夕方勤務終わりの時間帯だと開催場所に関係なく、通いづらいのかもとも思いました。
そのために週二回開催にして振替してもらって調整できるようにもしてみましたが、やはり土日のお昼頃にできるのが一番いいかもと考えています。
博士課程進学前に2年弱ほど梅田の会社で働いていて、先日そこの社長と会う機会がありました。
私が退職した後に増床し、オフィスに直結しない大きめの会議室ができたようで、そちらで同様の数学講座ができないか交渉中です(口約束ではOK)。
そこだと土日も営業しているので、土日開催も可能だと思います。
こちらとしては会議室提供へのお礼として、その会社からの参加者は割引をします(今回もそうしました)。
私たちは無料で場所を用意でき、企業側はこれまでにない講座を安く受けてもらえることで相互に益があるようにします。
もちろん、この講座が業務に直結しないとはいえ、それでもなお社員に受けてもらいたい・別に会議室を使ってもらってもよいと思ってもらえるよう努めていきます。
この講座は私にとって開催数が増えれば増えるほどよい経験になる仕組みなので、様々な企業・団体の方にアピールできるようになりたいです。
個人レッスンは個人向け、そしてこの講座は企業・団体向けとして、必要なスキルが異なる経験を積み、
あくまでも大学の中にある数学に近い啓蒙活動になるようにしていきます。

少し先の話をすれば、企業や学生団体があくまで「業務に直結する」ことを目的とした講座を開く例は多々あります。
この活動が上手く軌道に乗れば「業務に直結する」かどうかは別として「社員の教養教育に」という動機のもと参加してもらえるようになり、それならば数学である必要がなくなって、数学以外の理論系、人文科学系にも広げることができます。
私程度で差し出がましいかもしれませんが、一般的に文系と呼ばれる学問の博士課程以上の院生や若手研究者にも同じような経験をする機会があればと考えています。
「業務に直結しない」は少し自分でハードルを下げるための言葉になってしまっていますが、私自身はこのような数学を趣味でやることは「業務に役立つ」を大きく超えた能力に繋がると思っています。
私自身がその証拠となり、一般的に直接的には数学とは関係なさそうなスキルを身に付け、なぜそのスキルを数学経験から身に付けることができたのか言語化していく必要がありそうです。
そして趣味として数学を勉強することの選択肢の一つに、高校以前数学の学びなおしではなく、新しい数学に挑戦することを追加できれば、おそらく他の学問にだって応用できる啓蒙の方法になると考えています。
少し言いにくい話ではありますが、この講座にて私は非常勤講師の半期1授業分以上のお金をこの6週間計2×6回の講座で稼いています。
こういう機会が若手研究者に増えれば、啓蒙の点でも、そして若手研究者のスキル向上、そして経済支援に貢献でき、非常に意義のある活動になります。

 

まとめ


この記事、講座が終わったあとすぐから書き始めてすぐには書き終えていたんですが、
相変わらず推敲に時間がかかり公開が遅くなりました。
オンリーワンの経験というわけではありませんが、誰しもが経験しているわけでもありません。
そして私以外にも実行者として興味のある人もいると思います。
啓蒙、それか最近よくみるサイエンスコミュニケーションというワードに関わる人とかでしょうか。
それをテーマとした活動はたくさん増えてきているのですが、
それの中にいる人の振り返りや、それに関わった人の感想ってなかなか見る機会がありません(自分の検索能力が低い可能性も大)。
この記事は、そんな状況に少しでも役に立てばと思い書いてみました。
数学をテーマに同じようなことをやる人がいるとして、その人がどのような講座を構築するかは非常に興味があります。
是非是非、何かしらに少しでも役立てば幸いです。

もちろん今の私自身の本分は勉強・研究であって、啓蒙・教育などではないわけですが、そうはいってもこの先どのように数学に関わって生きていくか、もしくは全く関わらずに生きていくか、もういい歳ですし考えながら日々を過ごさなくてはいけないと思っています。
まだまだ選択肢は増やしておきたいのですが、最近はそろそろ選択する必要もあるなとも焦ってきました。
色々なことを両立させるのは苦手なタイプですが、それでもやりたいと思ったこと、そしてやる価値があると思ったことに対して取り組んでいく、後で振り返った時にそんな年月になっているようにしたいです。