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第11回「関西すうがく徒のつどい」に参加・発表してきました!

10月27日とその次の日と「第11回関西すうがく徒のつどい」( https://kansaimath.tenasaku.com/ )(以下、つどい)というイベントに参加してきました。

 

つどいは今回で参加は4回目、発表は2回目です。
発表の1回目はM1のときで公理的集合論入門のようなテーマでした。
少し発展的な話題として和集合公理抜きのZFCの話もしました。
まだまだ発表に不慣れで非常に残念な結果になってしまったのを覚えています。
ここらへんから学問系のプレゼンの作り方が自分の中で変わった気がします。
今回は自分の中でのリベンジとして発表に臨んだつもりです。

 

今回テーマにしたのは自分の中でもやりつくした感のある「無限帽子パズル」です。
タイトルは「無限帽子パズルと選択公理」として選択公理を用いた無限帽子パズルにおける囚人戦略を扱いました。
以下のような順でまとめていきたいと思います。

 

申し込みと準備段階


全ての発表希望者が発表できるわけでなく、他の申し込み者や難易度、分野の重複度合いをみて運営の方が申込者の中から選ぶ方式です。
申し込み時にタイトルだけでなく以下のような情報を明記する必要があります。
・講演の分野
・希望する講演時間
・希望する難易度
・講演不可能な日
・仮定する予備知識
講演する分野については悩みましたが公理的集合論にしておきました。
帽子パズルそのものは単なる論理パズルでしかないのですが、時間に余裕があれば公理的集合論とも絡めた話題を提供したいと考えていたからです。

講演時間は60分に。

特にこれだと受かりやすいということはないでしょうけど、選択公理と絡めた話題を話すなら60分でも十分だと判断しました。
また日ごろ60分でプレゼンすることが多いのでこれだとプレゼン作成時に時間配分などで悩むことも少ないだろうと考えました。

希望する難易度とは以前の会より発表者自身が難易度を自己申告するシステムになっており、A枠が大学高学年以上向けの必要知識多め、B枠が高校生から大学1、2年向けの2つのどちらかを選びます。
これは運営側の難易度調整を簡単にするためだと思われます。
今回の自分の発表では公理的集合論よりの内容は紹介するだけで、証明などはしないつもりでした(というか60分だと難しい)。
なので選択公理を使った証明をいくつか見せるだけなら(説明の上手さにもよるでしょうけど)とB枠にしました。
他の希望者とのバランス調整が目的だと思うのでB枠にしたから受かりやすいとかそういうのはないと思います。

講演不可能な日は、イベント2日目である28日から九州へ向けて出発する予定だったので、大事をとって1日目を希望し2日目は一応不可能としておきました。
もし1日目希望者多数だった場合は落ちてたかもしれません(実際にどれくらいの応募があったのかとか知らないですけど)。

仮定する予備知識は、かなり細かく書くよう指定されていました。
過去にその人の基準で「大学1年程度」と書き一般的な大学1年生にとってちんぷんかんぷんな発表があったのかもしれないし、自分も過去の講演で似たような結末になってしまいましたしね。。。
なので今回は自分でも細かく書きました。
素朴集合論の中から、集合・写像二項関係・同値関係・商集合・濃度・選択公理
グラフ理論の中から、有向グラフの定義とその用語
としました。
実は順序対とか整列順序関係とかもあったけど(忘れてましたすみません)。

これらを書いてアブストラクトと共に9月8日に提出しました。
そのあと運営さんより講演当確メールが来てプレゼンスライドを作り始めました。

 

今回もプレゼンはpreziを使って作成。
これでもう20個くらい作っていたのでかなり使い慣れてきました。
ただし、これも持つ機能を使い過ぎると単に驚かせるだけのプレゼンになってしまって
聴講者の頭に内容が入りづらくなるので、いつものようになるべく紙芝居っぽくなるよう意識しました。

 

いつもなら特に聴講者を呼んでのリハーサルなどはしませんが今回は気合が違うので
1週間前に一度毎週日曜にやっている数学自主ゼミの参加者の方がたにお願いしリハーサル発表させてもらいました。
これが自分の今までのプレゼンの中でもかなりの大失敗。。。
まず時間が大幅に足りなかったし、なぜかスライドが途中で動かなくなるし。
ちなみスライドが動かなくなったのはあまりにも容量の大きなスライドを作ってしまったからっぽいです。
紙芝居感を出すための同じページを何度も張り付けたり入れ子にしていたらかなり重くなっていたみたいです。
まぁ作っている途中でもときどきflash playerが止まってしまうくらいでしたし。

そして60分を超えたのは公理的集合論寄りの発展的な話題に時間をかけたからでした。
もともとの選択公理とは少し離れてしまう話だったのもあり大きくカットすることにしました。
それによって説明する前提知識も減らせたので今から考えるとかなり良かったです。
また聞いてくれた方たちから分かりにくかった点などを聞き、その部分には例えを盛り込むなどして膨らませました。
あとスライド内のデザインが統一されていなかったため色の使い方を一新しました。

 

完成したのがこちら。

http://prezi.com/ex2iphtqlcck/?utm_campaign=share&utm_medium=copy&rc=ex0share

めちゃくちゃ容量が大きいわけでないのですが、速度制限などを気にする方はWi-Fi接続時に見てもらえればいいかと。

実は本番前に2か所誤字脱字が見つかっていて1つは修正しましたがもう一つはまだ残っています。
P^{FE}と書きたいところでP_{FE}になっています。
preziはあまり学問的なプレゼンに向いてない理由の一つに打てる数学記号の少なさがあります。
なので自分はlatexでスライドを作りPDF化してpreziにアップロードして数式を見せれるようにしています。
なので数式部分を修正するには、この作業をやらないといけないわけですがまぁめんどい(だったらpreziとか使わずスライドそのままでええやんというは置いといて)。
もしどこかでこのプレゼンを再びやることになれば直します。。。

あとは個人リハーサルを何度かやって本番に臨みました。

 

発表について


発表は個人的には100点満点中50点です。
理由は時間が足りませんでした。

60分に収めるのは当たり前なのでそれをオーバーはしなかったのですが途中時間が足りないことに気付き(これを気付くのも遅かった。。。)、順次発言型パズル(階段っぽいやつ)の部分で、かなり急ぎ足になり証明も飛ばしてしまいました。
時間オーバーは自分の中で0点と決めているので、赤点にはなりませんでしたがやる予定の範囲内が収まらなかったのは非常に残念です。

 

対策としては質問は最後まで我慢してもらうようアナウンスするか(その代わり隙の無い内容にする)、途中で質問されることも込みで、時間を減らすことでしょうか。60分ならば自分の余裕も込めて45分くらいで作っておくといいかもしれません。

 

しかし懇親会や講演の間の休み時間などでいろんな方から分かりやすかったというご意見をいただけたので、B枠としての発表しては(個人的にですが)良い出来だったと思います。

 

また集合論を勉強していたり、帽子パズルを過去に見たことがある人たちからもたくさん質問がもらえました。
ところどころに集合論の中のワード、filterとかideal、連続体仮説、従属選択公理などなどを入れておいたおかげで、そこについての話題も個別に提供できました。
またやはり連続体仮説が登場すると聴講者の反応が良かったのでまた機会があればこの話題に絞りA枠にて「無限帽子パズルと連続体仮説」みたいなプレゼンをするのも楽しそうです。
ただ基数不変量の話も入るからまた時間足りなくなさそうですけど。

まぁやることになったら考えましょう。

 

発表以外のイベントについて


このイベントってオフ会に近いです。
始めて参加したときはTwitterをやっていなかったから知り合いもほとんどいなかったし、当時の自分にとっては各講演が難しくてあまり参加した意義がなかったのですが、
会を追うごとに私のことを知ってくれている人が増えて話せることも多くなりました。
また各講演にもある程度ついていけるようになり、他の参加者とも数学的な議論ができるくらいにはなったので、自身の成長がわかるいい機会になっています。

 

階段型パズルのまだ特徴的なpredictorの存在を証明できてない囚人数・帽子の色数をまとめた図を発表中に載せましたが、それの有限人・有限色に対する解を聴講者の方(とくに帽子パズル専門でない)に教えてもらえました。
有限な帽子の色の集合を整数の剰余群と同一視する考え方は何度かしているのに、私自身思いついておらず相変わらず思い込みが激しいなと。
ともあれ発表して、その発表を聞いた方から建設的な意見をもらうという良い経験ができました。
実はもう1つ助言っぽいものをもらっているので上手く証明できたらなとチャレンジ中です。

 

今回特に学生でない人と話す機会が多かったのですが、大抵立ちのみ屋のこととか聞かれました笑
まぁ今時点での私の属性の一つでもあるし、プロフィールにも書いてるし当然っちゃ当然。
ただ今は前と違って学問的要素無しの単なる立ちのみ屋( ウキウキ )なので、自分としてはその属性があることを学問的な場所ではあまり主張してないつもり。
「それについて話したくないから・お店に来てほしくないから」ではなく「数学活動に関係ないから・学問的なサービスがないから」なので、お酒好きな人は大好きですしそんな方はいつでもお気軽にどうぞ。
来年の4月までは週に4日は私が担当になっていますし、私が担当の時が来店したいなら事前に来店したい日の担当を私に聞いてもらっても構いません。

 

補足と参考文献


先にも書いた通り発表時間が足りず、後半の証明はかなりざっくりしたものになってしまいました。
発表スライドの中にも証明が載っている参考文献をあげていますし、Twitterにも書いたのですが情報列挙には向かないと思うので(だからこそブログ始めたわけで)ここにも載せておきます。

 

Amazon CAPTCHA

日本語で無限帽子パズルについて取り上げている本はこの一冊のみです。

他の帽子パズルについても載っているので日本語でどんなパズルか知りたい方にはこちらが一番いいと思います。

簡単な証明も載っていますので、興味をもつきっかけになれば幸いです。

 

The Mathematics of Coordinated Inference - A Study of Generalized Hat Problems | Christopher S. Hardin | Springer

現存する無限帽子パズル唯一のテキストです。これの出版以前の無限帽子パズルの結果が用語を統一しながら証明も含めて紹介されています。私のM2ゼミでの主要文献にもなっていたことから発表中の用語でも主にこちらを参考にしてます。公理的集合論的な知識を要求されますが、パズルの結果を見ているだけでも楽しいかもです。

 

https://www.cs.umd.edu/~gasarch/TOPICS/hats/infinite-hats-and-ac.pdf

上記のテキストの作者2人が書いた無限帽子パズルの入門的PDF。今回の発表の半分の結果はこちらに載っています。また発表中はかなりのスピードで終わらせてしまった選択公理・従属選択公理が関わる結果についても軽く触れられているので興味ある方は是非。きちんとした証明は上記テキストに載っています。

 

http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1988-04.pdf

私の修士論文をとある査読無し論文誌に載せてもらったもの。謝辞の有無しか差がないので修士論文と同一視してもらえば。2つ目のテーマである階段型パズルと選択公理について扱った論文の拡張結果についてはこちらを。

 

発表中には論文提出以降に思いついた結果も含まれていたのですが、それらについては今後帽子パズルについてまとめたノートを作成中ですので気長にお待ちいただければと思います。現在上記テキストの3分の2までの内容を含んだところまで完成しております。完成は来年2月を予定しています。理由はいずれ。


あと当日のTwitterの実況を見てて思ったことを捕捉すると、発表中「帽子パズル界隈」といかにもそのようなコミュニティがあるかのように言ってました。
例えば「finite error predictorの存在定理は無限帽子パズル界の中でも最もポピュラーな結果」みたいなことを話しちゃったかと。
ただ私自身もどれくらいの数学者が取り組んでいるか不明ですし、日本でも自分以外には指導教官を除き見たことがないので、結構「帽子パズル界」と「自分の中」を同一視してることがあります笑。
まぁ要は勉強する人増えたらいいねってことです笑

 

懇親会で集合論を学んでる学生の方とも話したのですが、無限帽子パズルの良いところは、集合論をやってない人が集合論の応用例としての帽子パズルを見せることで、集合論の面白さを伝えるための良いコンテンツになるかもという期待があるところだと。
どうしても集合論の面白い話題を紹介するためには、集合論の中の他の数学ではあまり使わないようなものを話してから紹介しなくてはいけないかもしれませんが、帽子パズルそのものに興味を持ってもらえれば、公理的集合論の話題を散りばめつつ話を進められるので、良いとっかかりになりそうです。
なのでこれからも色々なところで布教しつつ、集合論本体も勉強していきたいと思いました。
おそらく集合論のことが分かればわかるほど新しい帽子パズルの結果をどんどん生み出せていけそうですし、それと並行してこれからも帽子パズル関連の論文には目を通していけたらと考えています。

これまではあくまで既存のパズルの結果の拡張しかできなかったですが、自分で新しいパズルを定義して「そのパズルに対し良い性質を持つpredicotrの存在を示すには集合論のこんな結果が利用するよ」みたいな話ができるようになっていきたいです。

自分が数学から少し離れている間に帽子パズル関連の論文もたくさんでているみたいなので、趣味として追いつくためにも、無限帽子パズルの論文を私が読んでいくような自主ゼミを始めてみようとも計画中です。
おそらく裏難波大學主催という形をとり、いつものように少人数でものんびりやっていくと思うので、またきまればアナウンスさせてもらいます。

 

今回発表者としての視点が多めになってしまいましたが、これから数学を勉強したくて数学を一緒にやる仲間を見つかる・自大学にはない数学を知るには非常に良い機会だと思います。

別にTwitterアカウントがなくとも参加できますので、興味を持った方は気軽に参加してみるといいと思います。

あと閉会式で学生(特に学部生)の運営メンバーが足りてないとのことなので、もしこういったイベントに運営側として参加してみたい方は是非!

 

これ書いているの11月5日なんですよね。。。

つどい2日目の10月28日のイベント終了後に九州へ向かい5日間の集中講義を楽しんできました。

行きの新幹線でさっさとこの記事書こうと思っていたのに、忙しかったため後回しにしていたお店の売り上げ計算の事務処理的なものに追われ、九州では集合論が楽し過ぎてブログのことはすっかり忘れていて、帰りの新幹線ではその翌日に控えたイベントのプレゼンを作ったりとなかなか書けませんでした。

相変わらず筆(タイピング)が遅く、下書きは溜まっていく一方ですが、今後も色々と書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。