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企業の会議室をお借りして数学講座を開きました

さる2019年10月、企業のオフィスを借りて大人向け数学講座を開きました。
今まで個人レッスンの形で大人向け数学教室を運営してきましたが、それも1年半以上の経験を積み「そろそろ挑戦してみようかな」と思えるまでにいたりました。
このブログではどのようなものだったかを動機と経緯、そして内容、そして実際の参加者の感想を用いて語り、
反省点、その改善案、そして今後の展望を綴りたいと思います。
なので以下の6つの項目から構成されています。

 

動機や開催までの経緯をもう少し

 

そもそも数学教室の運営初期から、個人レッスンではなく講座で受けたいという要望はいただいていました。
個人レッスンの方が個人の理解度に合わせて一歩一歩確実に進んでいけますが、そのメリットの有る無しに関わらず、座学的に一方的に受け身に話を聞きたいという意見も理解できました。
よくよく考えれば自分も大学生の頃、この先生・もしくは授業内容ならば一方的に受け身で指導されたい、この授業では積極的に発言していきたいなど、その内容によってどのように学んでいきたいか変わることがありました。
なので個人レッスンでの指導能力の向上とは別のスキルとして、講座の設計などのスキルを伸ばす機会が欲しいなと思っていました。

 

問題は場所の確保です。
どれくらい人数が集まるかもわからない状況で、それなりに人数が入る場所を用意するのは金銭的に難しいです。
もし集まり過ぎた場合でも、そしてまったく集まらなかった場合でも困ります。
なのでこれまでのイベント同様、貸しスペースを借りるのではなく、タダで使える場所を探すことを目標としていました。
しかしそんな場所は誰が探そうが簡単に見つかるわけではありません。
色々とそういうイベント開催経験豊富な知り合いに聞いてみたところ、その開催理念によっては企業がその会議室を無料で貸してくれることがあると教えてもらいました。
調べてみれば関西の中でも、ゲーム制作会社がプログラミングをテーマとした外部者主催の勉強会のため会場を貸した事例を見つけました。
たしかにゲーム制作にプログラミングは必須ですし、会社にとっては自社で勉強会を開いてくれれば楽なことこの上ないでしょう。
その事例にも、貸す条件としてその会社の社員が参加できるものであることが挙げられていました。
つまり、会社に見返りやメリットなどを提示できればタダで会場を借りることができそうです。

 

そのころ、まだ両親の立ち飲み屋を手伝っているころでした。
お客さんの年齢層が高かったので、経営に関わっている人も多かったです。
そんな人たちにどのような数学講座なら会社の会議室を貸してもいいと思えるかなどなど、お酒を提供する合間に聞いてみてました。


また夏ごろに経営トップ層に裏難波大學の活動をプレゼンする機会が回ってきました。
他のプレゼンターは起業した・したての若者といった感じで、こっちは法人でもなければその予定もないので完全に場違いでしたが、「まぁやらないよりはマシ」くらいの気分でプレゼンしてみました。
そのオファーは前日の昼とかに急に来たので、すぐに5分間のプレゼンを仕上げましたが、今にしても思えば、それくらいすぐに説明用資料が作れるくらいには、自分も活動の意義などが明確になってきていたのかと感じました。
そこでプレゼンには企業向けの数学講座の企画中である内容を盛り込み反応を見ることができました。
そこから興味をもった社会人の方がこんな数学講座ならば是非是非うちでやってほしいと意見をもらえました。
しかしどのご意見も抽象的でした。
そもそもよくあるマナー研修とかなら企業側も依頼実績も体験数もたくさんあって要望も具体化されていそうですが、数学を扱ったものとなると想像ができず抽象的になるのも仕方のないことだと思います。
例えば「一般社員が数に強くなるように」という意見がありましたが、どのような状態が「数に強くなった」のか全くわかりませんでした。
もうすこし掘り下げてみると「数字が羅列された表やグラフを見て何かしらを気付く能力」だそうですが、それは果たして数学を教えることで身に付く能力なのか(個人的にはデータサイエンス寄りの能力のようにも思える)、そして何を教えることでそれがスキルとして身につくのか、そして私がこれまでやってきた数学の能力とどう関係があるのか、じゅうぶん考えてみても分かりませんでした。


少し脱線しますが、サラリーマン時代に新入社員向けITリテラシー研修というものがありました。
私が新入社員の頃は開発部署の課長(その時の私の上司)が対応していました。
そして2年目にして、私が教える側を担当することになりました。
その会社はかなりロジカルで数字で考える癖のついた社員が多かったので、これを私に与えられた仕事と捉えたとき、
その成果をどう数字で表現できるのか悩むことになりました。
そこで仕事帰りの本屋さんにて以下の本を衝動買いします。

『研修設計マニュアル: 人材育成のためのインストラクショナルデザイン
Amazonのリンクを貼っておきます。

www.amazon.co.jp

これは研修設計がテーマでもあるわけですが、研修担当者がいかに社内にてその存在や功績をアピールするかなども書いてあり、私がどのようにこの上司からの依頼に答えることができたのか表現するために役立つと思い色々と実践してみました。
研修という成果の数値化が難しそうなことでもやれることはあることを学べたのは良い経験でした。

ここから何かを指導するにしても、その目的設定とそれに向けての行動について色々と考えるきっかけになり、例えばその後の後輩のゼミ指導や、もちろん大人向け数学教室という個人レッスンにも活かされています。

 

話を戻すと、これからやる講座にしても完璧に数値目標を設定するのは難しくとも、講座を受けてどのような効果があるのかはある程度明確に説明できるようにならなくてはいけないでしょう。
しかしその視点で見ながら参考になるものはないかと、ネットで既にある大人向け・社会人向けと名のついた数学講座なるものを色々と調べてみました。

他には統計や機械学習といった流行りものがテーマのものまで意外とたくさんあります。
しかしどれもあくまで題材は高校数学+αくらいで、目標設定もよくわかりません。
資格取得のためならゴール設定もそれまでの内容もある程度具体的ですが、やはり単なる学びなおしや数学能力向上を目標としたとき、これで妥当なのかどうかも自分の中ではハッキリとしません。

 

また高校数学を題材とするならば、私が大学にて学んだ多くのことが役に立ちそうにもないなと思いました。
私が大学からどのように学んだかは以下のブログを参照してください。

souji0426.hatenablog.com

 

裏難波大學という団体のコンセプトが大学の中にある学問の啓蒙を目的としているので、高校までの数学を扱うのは少し軸がズレているとも感じました。
もちろん高校までの数学をきっちりやることも大事なことは確かですが。
なのでやはり大学以降の、できれば自分が一番楽しかった数学をテーマにしたいと考えていました。
また他の数学教室なり法人がやっている内容を真似しても、後追いになるだけとも。
せっかくやるのだから、内容的にも自称数学得意な講師なら誰でも良さそうなものでもなく、表面上は企業受けしそうなものでもなく、自分の専門性をある程度活かしたものに挑戦し、失敗するなら大いに尖った内容で失敗しようと考えました。

 

よって決まった内容はやはり「数学を学ぶ」ことのイメージが変わるようなもの、数学が単なる暗算・計算得意な人たちだけが挑むべきものでなく、数学書を読むだけなら訓練と時間次第で、文系理系関係なく誰だって出来るようになることを伝えられるものが良いではないと考えました。
これは普段の大人向け数学教室という個人レッスンでずっと意識していることです。
私は一人っきりで4年くらい多くの時間をかけて、数学書が(それなりに、まだまだ下手くそなことも多いですが)読めるようになりました。
別に後悔しているわけではありませんが、もし環境が良ければ・私の努力する方向をより早く修正できれば、もっと早く・もっと高い次元でそのような能力は身に付いたと考えています。
それが関係してか(そうであってほしいと思いますが)私が個人レッスンで教えたとき、そのお客様は半年から一年である程度正確さで数学書が読めるように、さらに証明が書けるようになっています。

つまり私よりも断然早く数学ができるようになっています。
私の宣伝ポイントはそこにあり、それこそこれからの講座にも活かすべきだと考えたものです。
そして単なる数学勉強ハウツーならば、実は本でもネット上の情報でも探せばたくさんあるのですが、それを羅列するだけでは退屈でしょう。
例えば練習試合形式を伴わないサッカー練習が楽しくなさそうに見えるのと同じです。
やはり何かのスキルを身に付けたらそれを発揮する場もセットで提供したいです。
そして勉強方法を伝えるにしても、何かの目標に向けてやらなくては、その講座を構築することも、その内容が部外者から見ても妥当であることを伝えることも難しいでしょう。
非数学系でない人にこの内容が妥当であるかどうか伝わることが私は大事だと考えています。それは、また今度の裏難波大學の理念を説明する記事にて語ることにします(もう書き始めて3か月以上経つ。。。)。


大学以降の数学にて基礎となるのはやはり(素朴)集合論です。これは数学科の1,2年で必ずカリキュラムに組み込まれていることからも分かります。
もちろん微積線形代数も大事なのですが、それについてより深く理解するためにも集合論への理解度は高ければ高いほど良いです。
単なる計算の仕方以上に微積線形代数を理解しようとすると証明を追えることは必要不可欠だと考えていますが、そうなると証明能力はどのように鍛えるかということになります。
意外と微積線形代数の証明に必要な知識って多かったりします。
実数に関する知識(たまに実数の公理から始まるテキストもあるし)や代数学に関する知識(たまに体論(代数学)から始まるテキストもあるし)から始まっていれば、まず最初にそういったものから積み上げていく必要に迫られますが、そうなるとそれなりに抽象数学になれておく必要を感じます。
そしてこれらの基礎になっているのも現代では(素朴)集合論です。というよりもそれを基礎として展開できると言えます。
つまりにどんな数学をやるにしても(素朴)集合論から始めるのが、遠回りに見えて一番の近道だと私は考えています(し、私だけがこう考えているわけでもないと思います)。
また(素朴)集合論もやりようによっては前提知識をかなり減らすことができます。
大学から新たに始まる数学ということは、それだけ高校数学に依存していない証拠でもあります。
ただし数や図形といった、これまで想像がしやすかったものがメインの対象でなくなりより抽象的になるため、論理が今まで以上に重要な武器になります。
だから、どのような論理で考えるべきかとか、それをどのように定義の理解やその証明に活かすかを盛り込む必要がありました。
そして(素朴)集合論も、集合・写像二項関係(からの順序関係・同値関係)・集合族といった風に細かいコンテンツに分かれ(本によってはもっと増える)、この後にどのような数学をやるかによって必要なものは変わってきます。
全部やるのは無駄が多い(そんな時間もない)。
よって先ほどの理由以上にこの講座の内容的な明確なゴールを設定する必要がでてきました。


そこで設定したのは「連続体仮説」です。
連続体仮説は数学の中でも際立った歴史を持つテーマの1つだと思っています。
通常の数学(と思うことができる標準的な公理系)から連続体仮説は「その肯定も否定も証明できないこと」が証明されています。
どんな数学的命題も真偽がハッキリする、そしてそれこそが数学の最大の特徴であるかのように考える人にとってこれほど驚きがあるテーマはないのではと考えました。
(もちろん数学の捉え方次第で、この歴史的事実の捉え方もまた変わりますが、それは数学者の管轄外の話で、そのような思想や哲学を持ち込んだとしても、この証明が無意味というわけではありません。)
「その肯定も否定も証明できないこと」の証明は独立証明と呼ばれていますが、これの理解まで行くと大学院レベルとなるのでさすがに難しい。
多分数学科生相手にしても6回とかの講義では到底足りないでしょう。
でも「連続体仮説がどのような問題だったのか」を説明するだけなら、必要な(素朴)集合論的知識もそんな多くありません。
また連続体仮説は私の(公理的)集合論という分野における重要なテーマの一つであり、単なる微積線形代数よりも私にとってふさわしいテーマであり、かつこのテーマを歴史的な視点も踏まえて解説できる人材は、数学科全て含めてもそう多くありません。
ちなみにその理由は私がそれにたどり着けるだけ他の人より数学に秀でているからではなく、単にこれについて学べる数学科が少ないからです。
先のブログ記事にも書いた通り、私はこの数学が学びたくて大学院進学を決めています。

よって「連続体仮説の主張そのものの理解」をゴールに設定し、そこにたどり着くまでの証明の中で「数学を勉強すること」と「証明とはどのような営みか」について考えが変わるような内容にしました。


ただ基本概念を細かく丁寧に説明すればするほど、証明に割く時間が短くなります。
なので講義中で証明したかったもの、もしくは理解に役立ちそうな簡単な定理を演習問題として組み込み、講座とは別に演習時間を設けて、その中で証明中心に解説することにしました。
本当はだれか演習問題を解いてきた人に前に出て発表してもらい、それを全員で検討するような、それこそ大学数学科内における演習のようなものにしたかったのですが、今回は解いてきた人は現れず。。。
かっこよく言えばアクティブラーニングですが、それの運用方法についてはまだまだ自分には知見が足りなかったようです(あと感想から察するに単に問題が難しかった可能性も高い)。
この証明の添削は、個人レッスンの中でも非常に効果の高い仕組みだと自負しています。
添削というのは、単なる言葉遣い・記号や記法の訂正から、より分かりやすくなる工夫や証明法の提案、そして論理の整理、分からなかった箇所があればそれをヒントを与えつつ一緒に埋めるなどなどをすることを指します。
手本のような証明を知るだけなら検索や情報収集が上手くなれば可能ですが、自分が書いた証明を正しいかどうか、もしくはどれほど正しいか、誰かに直接訂正しコメントをもらえて、より良い証明へ昇華する機会は、大学の外にはなかなか存在しません。
ゆえにこの個人レッスンの良さを主張するときに、この添削というサービス・仕組みは必ず入れるようにしてます。
そのエッセンスを、この講座にも取り込もうとした結果が、この演習という仕組みになります。

よって私がやりやすい、そして数学の基礎として相応しい、そして数学科に進学しなければ知ることができない珍しい・貴重な(自分で言うなというツッコミはさておき)テーマを選択し、私のこれまでの学習歴・指導歴を活かせるような形式を採用しました。


しかし、このコンセプトが出来上がった時、「一体どこの企業がこのような講座のために会議室を貸してくれるだろうか?」と不安になりました。
先ほどの懸念に戻れば、この講座を受けた社員がその日以降に何か業務内容や効率がよくなったりするでしょうか?
もし、これがきっかけで数学学習が習慣となり、論理的に考える癖が今まで以上につくようになれば、つまり中長期的に見れば効果はあると言い切れますが、これも私の手を離れた後の話なので、後後その効果について実感するのも難しそうです。
まとそのような能力向上があったとして誰しもが上手に言語化し上司や周りの人に伝えてくれるとも限りませんし。
だからこそ数字で表現できるのが一番手っ取り早いのですが、これも今すぐは難しそう。
最後にテストみたいなものをやらせてみても、それはその問題について暗記しただけかもしれないので、数学について何か理解が深まった証拠にはなりづらいのではないかと。


少し愚痴っぽくなりますが、このような問題ってTwitterでもよく見る大学で身に付いた能力をどのように企業にアピールするかという問題と同じ難しさがあります。
ITや経営・経済とか、その企業に業務に直結するような分野(統計学・工学や医学・化学)でもなければ説明はかなり難しい。
とくに人文科学系や理論科学系は、なかなか業務に結び付けづらいし、結び付けしてみようとしても単なる就活生だと業務内容を詳しく知らないので難しい。
だから意識が高い人ほど、このような分野は生きていく上では役に立たないという意見との戦う機会がたくさんある。
その戦いがめんどくさくなればそういうことと戦わなくてよい世界へ行くか、あえて戦ってみるか(でもそのような戦いから得るものは逆に大学の中では役に立たなかったり)の二択。
今回自分は戦うのは分が悪そうだと感じ、最初からこういったどちらかという教養教育に興味のありそうな(すなわちこちらとしてもある程度説明が楽になりそうな)経営者を探すことにしました。
それこそネット上で社内に数学部を作った事例など、社員の業務に直結しない部分での教育に理解のある会社もあるとは知っていたのですが、私の周りには見つからず(というより経営者の知り合いって増やそうと思って増やせるものではないですよね)。

そんな折、昔新入社員の時に社外研修で出会ってその後飲み友達になった知り合いに相談したところ、その彼が勤めていた会社の社長ならば教養について理解があり、部屋も夕方以降ならば開いている可能性が高い、そして嬉しいことにアクセスが良い(阪急梅田駅から徒歩10分以内)ということで紹介してもらいました。
その彼も含めて会社に赴き、その社長と打ち合わせをさせていただき、上記の内容を短く簡単にまとめた企画書を提出し、無事開催できる運びになりました。

 

長々と書きましたが、ここまで開催までの経緯です。
まとめれば業務に直結しない教養的な内容で、それに理解ある社長に出会うことができたというただそれだけです。
ただそこまでの流れを自分が後々、この時の設計思想を思い出しやすくするためにまとおきました。


形式・進め方

 


形式としては無料のガイダンスと講座計6回からなります。
ガイダンスは、その先が有料でもありますしその内容やその意図を説明して納得してもらうために開きました。

それについては実際の申し込みページが詳しいので、リンクを貼っておきます。

kokucheese.com

上の経緯でも書いた通り、第2回目以降の会には任意の演習が付いていてそれに参加するかどうかで金額も変わります。

この料金設定の理由としては、普段4500円で教えているので、それよりも一人あたりは安くなるように設定しました。
なぜなら個人レッスンでは60分の真剣勝負で毎回内容も変わりますが、これはある意味決めた内容を繰り返すだけなので(定期開催できるようになれば)自然と準備にかかる時間も減ることから、安く設定しています。
まぁこの頃はコロナのことなんて全く予想できていないわけですが。

 

内容と工夫・意図したこと

 

内容は上記のリンクに書いてある通りに進めました。
あまり詳しく書き過ぎちゃうと、実際に講座を受けた人たちが不利になるので控えます。
それに数学をキチンと学んだ人からすれば、この講座内容だけで、どのような話をしたのか大体は分かってしまうと思うので。

では、工夫や意図したことを3点ほどあげます。

 

1つ目:写像集合論的定義


(素朴)集合論は数学の基礎になっているということを実感してもらうための工夫です。
公理的集合論を学べば、ほぼ全ての数学概念が集合や集合論の記法を用いて表現できることが実感できます。
このほぼすべてには一見集合っぽくない、関数や(自然)数も含まれています。
さすがに自然数を集合で表現するのはやりすぎな気がしたので、関数(もっというと写像なのですが)を集合で定義できるところを見せて、集合の表現力の高さを感じてもらいたいなと思いました。
関数を単なる対応規則だとする方が分かりやすさは上がるのですが、集合論の後に別の数学に進んだとして、例えば関数一つ一つを要素として扱うような構造や、より抽象的な関数(関数を関数に移す関数とか)が出てきたりするので、それが出たときに関数ってなんだっけ?と悩むよりは、集合論的にキッチリと定義しておく方がいいのかなと思いました。
しかしこれについていくつか反省すべき点もあるので、それについては後述します。

 

2つ目:小話を挟む


これは90分以上の講義・講座・研修をする人が大体やっていそうですが、毎回間に5分から10分の子話を挟みました。
単なる息抜きやアイスブレイクとかではなく、数学に関係したものをチョイスしました。
どのように関係したものかというと、数学の分野の大まかな全体像や、数学科でのカリキュラム、そして数学科におけるゼミ活動の内容など。
とくに後半二つは直接数学に関係あるわけではないですが、数学科の様子から「数学の勉強の仕方」の参考になることがあるのではと考えました。
また数学書・論文の輪読を行うゼミ活動の大事さを伝えることで、誰かと証明を題材に対話することも理解への促進になることを伝えました。
大学でのカリキュラムや指導方法は何も教員たちの思いつきでやっているわけではありません。
その学問なりの理由があります。
なかなか他の学部の様子を見る機会はないと思います。
これも実際の数学科生(つまり私のこと)が講師を務めることの一つの利点だと考えました。

 

3つ目:ほとんど歴史の話だった第6回目

 

第6回目は、ほとんど歴史の話でした。
第5回目の最後までに目的の「連続体仮説の主張を解説」という目的を達成しておいて、第6回目はそれがどのように数学(とくに数理論理学・数学基礎論において)の中で発展していったかの解説でした。
これは目的よりは逸脱した内容ですが、啓蒙を意識する自分として必ず入れておきたいものでした。
公理的集合論の誕生から、不完全性定理まで(簡単にですが)解説し、単に「独立」だったとだけ説明するにしても、「何から独立なのか」とか「独立であることはどれだけ珍しいことなのか」まで含めて説明しなければ、何かその先の数学において誤解が生じるかもしれません。
実際ここらへんの独立性問題や不完全性定理は、初学者とか関係なくかなり誤解が生じやすい範囲で、Twitterでも半年に一度くらいは燃えます。
証明はしたことがなくてもその主張や使い方を正確に理解するにはそれなりに数理論理学や数学基礎論での経験が必要です。
そういった経験無くして語ると、なるべく日常言語的な語りで説明しようとし、結局数学的にも正しくない解説が出来上がります。
その経験が普通の数学科生に比べても自分にはあります。
それで90分も時間があれば、完全に数学的なものとはならなくとも、間違ってはいない(後に本人にとって悪影響を与えなさそうな)解説はすることができます。

これがいき過ぎた自信にならないよう今後注意しておかなくてはいけないとも思っています。
また時間に余裕があったので、これらがどのように間違って引用・理解されやすいかも説明してました。
ここらへんは、自分が数理論理学を学び始めたときのハマってしまった落とし穴を埋めるような気持ちで導入しました。
でももしかしたら少しおせっかいだったかもしれません。
でも数学学習をこの講座でだけで終わらせないためには、なにか発展的な分野への案内が必要だとも思いましたし、私が提供できたのはこういった話題でした。

もし私が解析学専門ならそれに関する発展的な話題を付け加えたでしょう。


啓蒙ってその言葉の意味からも、どうしても上から目線なものになりがちですが、
そうであったとしてもこちらが数学について教養が付くようにと意図した結果になっています。
何度も言いますが、連続体仮説不完全性定理について専門家・もしくはそれに近い人(自分がこれに当てはまる)から直接話が聞ける機会は少ないです。
動画投稿サイトにあるものを20件ほど見てみましたが、ほとんどが(わかりやすく説明しようという工夫なのかもしれませんが)数学的に間違っていました。
完全に正確に説明したら難しいのは仕方がないとして、どれくらい軟化させて話すかのさじ加減については、私なりに自信があります(というよりこれから啓蒙を志す以上なくてはいけないです)。
分かりやすければ多少間違っていてもOKという主張には私は全面的に反対です。
間違わずに、与えられた時間の中で、どれだけ丁寧に、なるべく多くの人の分かりやすく説明するか、そのスキルを自己批判も取り込みながら伸ばそうとするからこそ啓蒙活動家ってなれるのかなと考えています。
今後も他の活動に関しても、そこは意識しながら多少高度に難解になってしまったとしても挑戦していきたいと思っています。

 

感想

 

ここでは実際の参加者より頂いた感想文をコピペして載せていきます。

参加者には公開することと、良い点悪い点自由に書いてくださいと伝えてありました。

書き方や文字数などがそれぞれ違うのがその特徴でしょうか。
提出されたものには性別や年齢が記載されていましたが、先日作成した新しい情報公開方針に則り、感想文のみ載せていきます。

souji0426.hatenablog.com


また感想文の順序に特に意味はありません。

世にある様々な数学の個人レッスン・講座って、感想文(あっても数行程度)がなかなか公開されていなく(企業の方針もあるのでしょうが)、その内情がなかなか、興味をもった人から見えにくいのではないかと考えています。
私にとって良いものも悪いものもとくに取捨選択せず載せていくことにします。
改行はこちらで適当に入れさせてもらいました。
発見した明らかな誤字脱字も訂正してあります。


感想1つ目

 

この度は、このような機会で勉強させてもらい、毎週とても楽しくワクワクする時間を過ごさせてもらいました。
常日頃から大学以降の数学を勉強しなおしたいと思っていたもののなかなか良い機会が無かったので(私は数学科を卒業したのですが、学生時代は理解しきれなかったところが多く、社会人になってからも数学を勉強しなおしたいとずっと思っていました)、このような講座があると知ったときはすぐに申し込みをさせていただきました。

講座では大学で学んだ内容を具体例を沢山交えて話をして下さったのでとても理解しやすく、私の学生時代もこのように教えてもらえたら理解度も変わっただろうなと思って受講していました。
私以外の参加者の方のほとんどは大学で学ぶ数学を勉強すること自体が初めての方のようでしたが、そんな方でも分かりやすいように、話をしてくださっていたと思います。

全体を通して有意義な時間でした。また他の分野(数学以外でも)でこのような講座が開催される際には参加させていただきたいとが思います。
とても楽しかったです。ありがとうございました。

 

感想2つ目

 

今回の数学講座を受けてみて「数学のイメージが変わりました。」

高校の数学は方程式やグラフを使って求めることが多かった。
今回の数学講座を受講して、方程式やグラフを使わなくても「数学」ってがあるんだと気付きました。
今回学んだ内容「証明」は初めて見る記号が沢山出てくるため、覚えることに注力しました。
そこで覚えた記号を読み取り、自己流の証明を作っていきます。

しかし、実際に証明してみると、どこまで定義をして良いのか分からず、途中で講義に追いつくことが厳しくなりました。
毎回、宿題が出るのですが、そこで講義で分からなかった箇所を復習してみるのですが、やっぱり数学は難しい、、と思いました。
学生の頃と比較してみて、理屈が分からないまま授業が進んでいくことがありましたが、今回は雰囲気だけでも掴むことが出来るまで苦とは感じませんでした。
一回、受講してみるとイメージが変わるかも!

 

感想3つ目

 

難易度は高く感じましたが非常に有益であったと思います。
論理的に証明を組み立てる手順のエッセンスを知ることができました。

定義を押さえ、仮定を漏れなく検証するという証明の過程を知ることは今後自らが物事を論理的に(数学的に)捉える能力を鍛えていくための良い道筋を示して頂けたと考えています。

一般的には実務的な題材では無かったかもしれませんが、普段業務にてプログラムやデータベースを扱うエンジニアである私に限って言えば、それらのテクノロジの裏にある理論を理解するうえで必要となる集合論の言葉遣いを学べたことは直接的にも有意義でした。

ただ、欲を言えば課題の解答解説は毎回セットでご提供頂ければありがたかったかなと思います。
内容を出来る限り都度定着させてから次に進みたかったですが、それは叶いませんでした。

今後ともこういった社会人向けの講座の機会があれば是非参加させて頂きたいと思います。

 

感想4つ目

 

裏難波大學では、集合論を学びました。
最初に証明に講義内でつかわれるであろう記号から覚えていき、実際に記号を使った計算式を書いていきました。
証明問題なので書き方のコツとか、まとめ方、解き方のコツはあると思うが、一人でその証明を解いていこうと思うとかなりむずかしく、一人で解くことができないと感じました。
問題の解説も復習のために欲しいと感じました。
また、数学書を読めるようになったかと言うとそれはまったくわからないです。
今までにフェルマーの最終定理は読んだことがありますが、当時はかなりむずかしく感じていて、再度読み返してみようとは思っています。
この講義自体は普段触れることがない分野だったので、とても有意義な時間を過ごすことができました。
大学でうけるであろう講義を割安な値段で受けることができるのもかなりの強みだと思います。
無限という概念を考えることは人生においてほとんどないと思うので少しでも興味があるならば受けてみてはいいのではないかと思いました。

 

感想5つ目

 

・講座で学んだこと、講座を受けて良かったこと
集合論という今まで知らなかった数学を知ることができてよかったと思います。
今まで発見された定理を使用してパズルを組み合わせるように正しいこと(正しくないこと)を導いていくところを見させていただいて少し面白さを感じました。(理解不足で雰囲気でわかったつもりになっただけですが)
証明に取り組めば、論理的な思考、筋道たててものごとを考え伝える力が身につくとも思いました。
また数学者の小話も知らない世界を知れて興味深かったです。
 
・理解度について
本講座の目的である「数学書が読めるようになる」からすると、理解はあまりできていません。
課題の数をこなして身についていくものだと思いますが、課題を自力で解くことができませんでした。
初学者としては課題の難易度が高く、もう少し簡単な課題もあったら復習が取り組みやすかったかもしれません。

 

感想6つ目

 

今回、数学講座を受講して良かった点及び改良いただけると嬉しい点を記載します。

良かった点
・大学で受講する講義と同等、もしくはそれ以上の内容
今回受講するにあたって説明を受けたレベルを満たしており、また説明等も懇切丁寧であったと感じています。
事前知識がない者であっても、とっかかりのある内容でした。
講座の合間のブレイクタイムで、興味をそそる小噺があったこともプラスに働いていると思います。
数学が単純に問題を解いて、答え合わせをする学問ではないことが充分に伝わる内容でありました。

改善点
・個人の力量に依存している進度
講座のスピードに関しては異論ありませんが、課題や演習などでもう少し工夫いただけるとより良くなるのかなと感じました。
特に、課題をどうやるべきかがわからないまま演習を迎えたために、一方的な演習形式になった印象があります。
講座でかなり丁寧に証明の説明をいただきましたが、それを基に新しい証明を課題とすることは難しく、
写経→穴埋め→誘導問題→証明
のように順番に思考を慣れさせていくことが良いのではないかと個人的には感じています。
複数人から課題の答えの要望があったと記憶しておりますが、初めから証明の答えを与えることはあまり利にはならないと思います。
まずは手を動かさせて、数をこなさせることで少しでも身につくのではないかと考えております。

社会人向けということで学生で感じる部分と異なる点はいくつかあります。
しかし、当人が理解し、自ら学べることを目指す点は同じだと思います。
この点に更にフォーカスを当てブラッシュアップをしていくことで、より多くの方がこの講座を通して数学の楽しさに気づき、満足していただけると思います。

 

反省点と今後の改良方針


反省点は挙げればキリがありませんが、まとまったものを3つほど挙げます。

 

反省点1つ目:演習問題の難易度調整ミスと配布が遅れたこと


感想文にもありましたが、難易度が高いとものが多かったようです。
1,2回目の演習問題では証明問題の方針のみを考えてもらい、3週目以降で実際に証明してもらうようなものに設定しました。
意図としては、まずは証明の目的(すなわち証明するべきことを定義に戻って記述したもの)をハッキリさせなければいけないと考えたからです。
例えば他人のゼミ発表を聞いていて、グダグダになってしまう時はそもそも発表者本人が証明すべきことを明確にできていないことが多いと思っています。
なのでいきなり証明を問題として出すのではなく、証明の目的だけを答える問題を出してみました。
しかしこの意図が適切であったかどうかを判定する以上に、問題の選択が、つまり難易度調整に配慮が足りなかったようです。
なるべく基礎的なものを出そうと心掛けましたが、基礎的であればあるほど、論理にまで踏み込んで説明しなくてはならないものも多く、それを講座内で網羅することも時間が足らず、演習問題の解答が補足も入れてかなり長くなってしまいました(つまり逆に分かりにくくなった)。
例えば「空集合はどんな集合に対しても部分集合になる」は約束事として理解すればそんなに難しくないものの、
実際に定義に戻って証明しようとすると、集合論の話というようりは論理の話に近づきます。
出題する問題は、ある程度講座内容を決めている段階で、これくらいは(そこまで説明を要せず簡単に)私が解説できるだろうとふんで出題したわけですが、
これが完全にミスでした。
出すのが悪いのではなく、それに対して答える用意をもう少し十分にする仕掛なりなんなりする必要があったと思います。
演習問題の解答は各講座終了後に私自身が解いて配布する予定でしたが、「これまで講座で話した内容から逸脱し過ぎず説明するか」に悩んで配布が遅れました。
それなりに冗長になってしまったものの、最終的には全て解答を作成し配布しましたが、もし演習問題の難易度や解説のしやすさにまで配慮して、各回ごとに配布していれば、受講者の理解力はさらに上がった可能性があります。
この講座中だけでも家にて一人で数学の勉強を楽しんでもらうための仕掛けが演習問題・宿題なわけですから、
これの内容選定にも講座と同じくらいに知恵を絞る必要があったと思います。

 

反省点2つ目:「前提知識の少なさ=簡単さ」ではない


自分は大学入学して初めて本格的に数学を勉強し始めて、(素朴)集合論の基礎的な範囲内での抽象的な議論にそこまで抵抗なく付いていくことができました。
これは私自身の振り返りでは前提知識の少なさが関係していると考えていました。
もちろん授業を聞いているだけで理解したわけでなく授業時間外にも色々と本を読んだりしていましたが、それだけやれば何か特別な理解力なんてなくとも誰でも理解できるものだとしていました。
しかし本人のやる気に関係なくいきなり抽象的なものを誰でも理解できるわけではないようです。
例えば講座終了後にとある数学科大学教員の方の話を聞いた話だと、「空集合」と「空集合のみを要素とした集合」の違いになかなか気づいてもらえないそうです。
ちなみにあまりに理解してもらえないから、この類の問題は出題しないことに決めたそうな。。。
振り返ると自分は大学生時代に授業でこれを聞いて、この二つの集合が違うことにすぐに気づけましたが、誰でもそうではないということに驚きました(不遜な言い方で申し訳ありません)。
この二つの集合を定義するための前提知識はほとんどありません。
だからといって理解が簡単ではないということに今更ながら気づきました。
普段個人レッスンで教えていて、初学者にとって難解な抽象概念は、要素関係の複雑さが上がる直積集合やべき集合だと思っていたので、それに対しての例えや解説は配分を増やしてみたのですが、それよりも前にある話でも人によっては抽象度が高く理解まで時間がかかってしまうものだったようです。
この講座が初学者向けであることの理由として、前提知識の少なさをアピールしたのですが、それだけではダメだったようです。
前提知識が少ないことは確かにそうなのですが、故にその少なさをもう少し活かす仕組みがあれば良かったです。

 

反省点3つ目:配布資料の作り方


これは聴講者に向けてではなく私個人に向けた反省なのですが、今回講座に向けて作成したものは、話す用の原稿(講座では軽く確認する程度)と、配布資料と、スライドと演習問題の解答の主に4つでした。
小さなものとして最終回以後に配った参考文献リストなどがあります。
全てlatexを用いて作っています。
それぞれの違いを説明すると、原稿には上で説明した子話なども書き込まれていたり、口頭で解説したいことを話し忘れしないようにメモしたりしています。
配布資料は、原稿からすぐ上で書いた私向けの部分を除いたものになっています。
スライドは配布資料をそのままドキュメントクラスをslideに変えたものですが、見やすさへの配慮で位置調整をしたり、一枚のスライドに移る文字数を調整したりと、配布資料のソースファイルからはかなり手が加わっています。
どれだけ注意しながら作っていても、誤字脱字などあるもので、それが発見されたら、
まず原稿を修正し、配布資料とスライドの該当箇所も直すわけですが、配布資料への変更は容易ですが、スライドの修正がめんどくさかったです。
なぜならスライドはソースファイルも見づらくなってますし、説明のしやすさを上げるために同じ個所を二度以上写すなどしてましたから、一つの修正点に対して変更箇所が複数あることが多く、それの見落としがないか確認するのに苦労しまいた。
完璧な原稿を作っておいて、それを下地にして配布資料とスライドを作っておけばよいのですが、なかなか理想通りにはいかず。もう少し作り方を工夫しておけば手間も減り、演習問題の解答作成の時間も増やせただろうなと思います。
今のところ、先に原稿をある程度完璧に作るくらいしか対策しか思いつきませんが、この時の資料を再利用する方向で考えてみます。

 

これ以外にも細かな反省点は多々あります。
それに対して現時点で考えている改善策は以下の2つです。
もちろんこれ以外にもメモしているものはありますが、次回の講座において大きく変わる部分のみ書いておきます。

 

改善点1つ目:時間の変更


反省点その2への対策は、時間を増やすことだけです。
この講座の前半で論理式を導入しました。
日常言語のまま、あやふやな記述をしてしまっては自分で間違いに気付くことも難しいのではと過去の経験から考えました。
世間にたくさんあるεδ論法の解説が、量化子を伴った論理式の読み解き方にほとんど注力しているところを見ると、やはりまずは論理記号に、そして論理記号の読み書きにどれだけ慣れるかが、障害の一つではないでしょうか?
もちろん論理的に考えることと、論理記号に慣れることはイコールでないことは承知してます。
でも、これがあるからこそ曖昧性を排除して、数学だけに集中できるようになれるとも思っています。
ただ数理論理学的に論理式を厳密に定義すると、かなりの脱落者が出るので、ここでは厳密性は諦め、適当な定義で済ましました。
例え数学をそれなりにできる人相手でも、数理論理学的な論理式の定義は初見ではなかなか難しい印象があります。
ただ厳密であるにしろそうでないにせよ、日常言語の論理式への翻訳、またその逆翻訳もすぐに身に付くものでないことも分かりました。
一応それに類する演習問題も入れていたのですが、反省点の1つ目にあるようにもう少し素朴な例から簡単なものも取り上げておくべきでした。
そしてある程度その翻訳やそれを用いた証明の理解などに割く時間を増やしたいと考えています。
以前に公理的集合論勉強会を企画・運営しましたが、やはり難しいのは導入、そして基礎知識の展開なのでしょう。
そしてこれ以上内容を削ることも難しそうなので、時間を増やす方向で考えていて、今が全6回ですから、それが7か8回にすることで調整しようと思っています。
前半以外のところは、概ね今のままで良いと考えています。

 

改善点2つ目:演習問題の難易度調整


これはすぐに思いつく、そしてやるべき改善点です。
やはり記号に慣れるまでもう少し丁寧に進めるべきだと思います。
講座に付随する演習時間も、今回は証明という作業が始まってからでしたが、それ以前から始めて、しっかりと調整した演習をキッチリと答えていく時間も必要です。
また1つ目の改善点より講座日程が増えるならば、付随する演習も増やすことができます。
そして演習は任意参加のため参加しない人もいるかもしれません。
その人でも流れについて来れるような演習問題を上手く用意したいです。

 

今後の展開


上で挙げた点を改善しつつなんとか会場を確保しながら続けていきたいです。
今回会場をお借りした企業も引き続き会場を借りることに了承を貰っています。
ただその企業の営業日の都合上、土日は借りることができません。
やはり夕方勤務終わりの時間帯だと開催場所に関係なく、通いづらいのかもとも思いました。
そのために週二回開催にして振替してもらって調整できるようにもしてみましたが、やはり土日のお昼頃にできるのが一番いいかもと考えています。
博士課程進学前に2年弱ほど梅田の会社で働いていて、先日そこの社長と会う機会がありました。
私が退職した後に増床し、オフィスに直結しない大きめの会議室ができたようで、そちらで同様の数学講座ができないか交渉中です(口約束ではOK)。
そこだと土日も営業しているので、土日開催も可能だと思います。
こちらとしては会議室提供へのお礼として、その会社からの参加者は割引をします(今回もそうしました)。
私たちは無料で場所を用意でき、企業側はこれまでにない講座を安く受けてもらえることで相互に益があるようにします。
もちろん、この講座が業務に直結しないとはいえ、それでもなお社員に受けてもらいたい・別に会議室を使ってもらってもよいと思ってもらえるよう努めていきます。
この講座は私にとって開催数が増えれば増えるほどよい経験になる仕組みなので、様々な企業・団体の方にアピールできるようになりたいです。
個人レッスンは個人向け、そしてこの講座は企業・団体向けとして、必要なスキルが異なる経験を積み、
あくまでも大学の中にある数学に近い啓蒙活動になるようにしていきます。

少し先の話をすれば、企業や学生団体があくまで「業務に直結する」ことを目的とした講座を開く例は多々あります。
この活動が上手く軌道に乗れば「業務に直結する」かどうかは別として「社員の教養教育に」という動機のもと参加してもらえるようになり、それならば数学である必要がなくなって、数学以外の理論系、人文科学系にも広げることができます。
私程度で差し出がましいかもしれませんが、一般的に文系と呼ばれる学問の博士課程以上の院生や若手研究者にも同じような経験をする機会があればと考えています。
「業務に直結しない」は少し自分でハードルを下げるための言葉になってしまっていますが、私自身はこのような数学を趣味でやることは「業務に役立つ」を大きく超えた能力に繋がると思っています。
私自身がその証拠となり、一般的に直接的には数学とは関係なさそうなスキルを身に付け、なぜそのスキルを数学経験から身に付けることができたのか言語化していく必要がありそうです。
そして趣味として数学を勉強することの選択肢の一つに、高校以前数学の学びなおしではなく、新しい数学に挑戦することを追加できれば、おそらく他の学問にだって応用できる啓蒙の方法になると考えています。
少し言いにくい話ではありますが、この講座にて私は非常勤講師の半期1授業分以上のお金をこの6週間計2×6回の講座で稼いています。
こういう機会が若手研究者に増えれば、啓蒙の点でも、そして若手研究者のスキル向上、そして経済支援に貢献でき、非常に意義のある活動になります。

 

まとめ


この記事、講座が終わったあとすぐから書き始めてすぐには書き終えていたんですが、
相変わらず推敲に時間がかかり公開が遅くなりました。
オンリーワンの経験というわけではありませんが、誰しもが経験しているわけでもありません。
そして私以外にも実行者として興味のある人もいると思います。
啓蒙、それか最近よくみるサイエンスコミュニケーションというワードに関わる人とかでしょうか。
それをテーマとした活動はたくさん増えてきているのですが、
それの中にいる人の振り返りや、それに関わった人の感想ってなかなか見る機会がありません(自分の検索能力が低い可能性も大)。
この記事は、そんな状況に少しでも役に立てばと思い書いてみました。
数学をテーマに同じようなことをやる人がいるとして、その人がどのような講座を構築するかは非常に興味があります。
是非是非、何かしらに少しでも役立てば幸いです。

もちろん今の私自身の本分は勉強・研究であって、啓蒙・教育などではないわけですが、そうはいってもこの先どのように数学に関わって生きていくか、もしくは全く関わらずに生きていくか、もういい歳ですし考えながら日々を過ごさなくてはいけないと思っています。
まだまだ選択肢は増やしておきたいのですが、最近はそろそろ選択する必要もあるなとも焦ってきました。
色々なことを両立させるのは苦手なタイプですが、それでもやりたいと思ったこと、そしてやる価値があると思ったことに対して取り組んでいく、後で振り返った時にそんな年月になっているようにしたいです。

マイノリティにも配慮した裏難波大學の新しい個人情報の取り扱いについて

この度、裏難波大學のコンテンツやサービスへの申し込み時の、マイノリティのお客様への対応を導入いたしました。
もちろんこれまでに取得した個人情報を許可なく公開したり、取得した情報によってサービスの内容を変えたりなどはしてきませんでした。
しかし、恥ずかしながら「取得しても利用しなければ問題ない」と浅はかに考えており、その点について知人たちから貴重な意見をもらって、対応・対策の必要性を感じました。


また単に性別などについてだけでなく、それ以外の個人情報の取得や公開方法についても再考し、新たな指針を作りました。

このブログでは

 の大きく三つに分けて書いていきます。

 

これまでの対応、そしてその至らなかった点


これまで当団体での個人情報を取得する機会は数学教室(個人レッスン)、数学講座、イベントの申し込みが主でした。

当然取得した情報は許可無しに公開することはなかったのですが、許可を受け取った上で

  • HP内に配置した数学教室の感想文に付記(「男性・30代」といった形で)
  • Twitterにて個人レッスンや講座の様子を伝えるツイートに付記(こちらは過去の未削除ツイートに2件確認)

という形で使用していました。

 

感想文の提出や授業風景の発信は強制ではなく、感想文などを書く本人が望まなければ公開しない方針でしたし、これまでのお客様・生徒様に関しては非公開を希望した方はいませんでした。
性別だけでなく氏名・年齢・職業なども同様の扱いでした。
年齢に関しては、そのままの数字ではなく、20代・30代という狭い曖昧さでお伺いしていました。

ちなみに感想文などに上記のような情報を付記していたのは、性別・年齢・職業問わず様々な方が当団体のサービス(この時点では主に数学に関係するものが多い)を利用していることを外部へ発信するためでした。
数学をコンテンツに添えたイベントや学びの場所は男女比が偏っていて、平均年齢が低い印象を、私は持っています。
そうでない人たちが、性別・年齢・職業などに関係なく数学を学んでいると知ってもらえれば、当団体に関わるかどうかは別として、数学の学習へ一歩踏み出してくれるのではと期待していました。

改めて考えてみると、私たちが求めなくとも当団体の告知の意図を知り、そのような情報を自ら発信する人もいるはずです。
ならば、自己紹介含めた個人情報は自由記述にして、当人にどれだけ情報を出すかのさじ加減を任せれば良かったと気づきました。

 

また取得した情報はとくにどこかへ保存していたわけではありません。
顧客分析をしていたわけではないので、一次的に入手した個人情報も利用していたわけではありません。

ただ対面指導のさい、相手の年齢や職業が分かっていることで指導しやすかったことはありました。
たとえ話をするにしても私と年齢が近いと知っていれば通じるものも事前に分かります。
そして私自身プログラマの経験が僅かながらあるので、相手がプログラマだと分かっていれば、プログラミングと数学との相性の良さから、数学概念を何かに例えるときに便利でした。

こちらに関しても改めて考えてみれば、私のプロフィールは詳細にHPに記載していたので、お客様が何か共通点を見つければ、そしてそのような情報を知ってほしければ、自ら伝えてくると思いました。
よって今まで通り個人レッスンへの申し込みに自由記述欄を設けておけば、それで十分だと気づきました。

 

そこまで必要としていなかったにも関わらず、今日までコンテンツへの申し込み時にそのような情報を取得していたのは、申し込みシステムの設計のさい、これまで自分が受けてきたサービスに当たり前にあった項目を、(使わない可能性があるにも関わらず)とくに何か考えることもなく採用していたからです。

性別などの「取得」そのものが、すなわち取「申告すること」自体が、得後の使用の有無に限らず負担になったり難しい、回避したいという方がいることが不見識ながら把握できておらず、その配慮・対応ができていませんでした。

 

新指針


この指針はこれからの対応と、すでに取得した情報についてのものです。
簡単ながら画像にもまとめております。

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これからの対応


1. 個人レッスンや講座、イベント申し込みに関して


これまで取得していた「氏名、性別、年齢、職業」については「苗字のみ取得」に変更します。
変更の意図としては個人レッスンなど直接お話しする際にあだ名やハンドルネームなどでは対応しづらいことがあるので、これに関しては(本名でなくてもよい)苗字のみをお聞きします。

2.オンライン対応時のカメラについて


まだオンライン対応は無料モニターを募集している段階で本格化していませんが、お互いのタブレットやPCの内臓カメラのオンオフについての希望を毎回レッスン開始前にお伺いします。
ただし音声だけの情報では、こちらの指導力不足ゆえに対面での指導よりも進行に影響がでるかもしれませんが、その点はご了承くださいますようお願いいたします。

3. 個人レッスン、講座の感想文について


これまで付記していた「性別、年齢」については「一切付記しない」に変更します。
ただしもしかしたらご自身の希望でその情報、もしくはそれに近い情報を公開したい可能性もあるかもしれません。
例えば感想文などによくある「これまで10年ほどプログラマをしていましたが」や「数学に触れる機会のない主婦でしたが」など。
なので自由記述欄を設け、上のような自己紹介に近い文章は原文そのまま公開されることを伝えたうえで入力できるようにします。

4. SNSでの授業風景などの不定期発信について


これまでの「必ずではないが許可を取ったうえで個人情報を使用することもある」から「一切使用しない」に変更します。
なので内容は基本的には、そのレッスンや講座がどのようなものであったかを中心とし、添付する画像なども許可がとれたもののみ使用します。
また使ったことはありませんが今後も「彼・彼女」という人称は使用せず、お客様・生徒様などに統一します。
現在情報発信に使用しているのは団体用のTwitterアカウントが主ですが、新たなサービスを使用する際にも同様の方針です。

5. 1.から4.に当てはまらないものについて


今現在では個人情報を取得するような、情報発信するような機会は上記の4つに限られていますが、活動の幅を広げていく中で新しい形態のものを開始するかもしれません。
その時にも同様の配慮をしたうえで活動します。
また現在は代表一人の団体ですしとくに新メンバーを募集もしていませんが、
加入希望メンバーが現れた場合でも上記の点を留意して対応します。

すでに取得した情報について


これまで取得し公開した情報は下記のものだけです。

1.HPに記載された感想文の「性別・年齢」について


今後の感想文に上記のような情報が付記されないので、これまでの感想文と一貫性がとれなくなるので、過去の感想文からその情報を削除します。
もともと公開を許可されていた情報なので削除に対しての許可は不必要と考え、とくに感想文提出者へは連絡はしません。

2.SNSの発信に含まれていた情報について


発見した2件のツイートについては、上と同様の理由でもって削除します。

まとめ


この記事は代表が書いています。
代表は身体の性、性自認、性別表現は全て男です。
何かの申し込みをするさいに、その情報の取り扱い方法を知っていれば、性別情報を取得されることに対しての不安や葛藤などはありませんでした。
また(当然カミングアウトしづらいからだと思いますが)マジョリティに属さない・どこに属するか本人も分からない方が、私の知人にいたことはありませんでした。
同様にこれまで就業経験で、マイノリティの方と関わったり、それに関する対応でクレームやご指摘をいただいた経験もありません。
そうだったから配慮に至らぬ点があったと言い訳するわけではありません。

 

LGBTなどの単語を知らなかったわけではありません。
また、そのカテゴリーに属する、またどこに属するかも分からず悩んでいる人たちを差別する気持ちはありませんでした。
しかし私自身忘れていましたが、正しい気持ちが必ず正しい行動に結びつくわけでもなく、結果的に配慮がかけていました。
もしかしたらわざわざ私へ主張しなかっただけで、私の何かしらの行動に不快な感情を抱いた可能性も十分にあります。

 

この団体は大きく言うと学問に関わる、これから関わる人を対象とし、より多くの人と出会っていきたいと考えています。
私自身、単なる数学啓蒙の専門家でなく、幅広い知識を持ちそれを行動に反映できる人物になりたいと考えています。
そのような人物は自分の周りで問題になっていなかったからといって開き直ったりはしないでしょう。
もし何か自分の世界や常識が広がった際には行動に移していきたいと考えていますが、今回のように鈍感ゆえに気付かないこともあるかもしれません。
新たな常識や世界に合わせて変えていきたいという意思はこれまで同様今後も持つつもりです。
つまり、現在自分が持っている常識や知識の全てを固定し信用・信頼・信奉しているわけではありませんので、改善案や導入・採用してほしい仕組みなどございましたら、意見提出そのものが難しいことも承知していますが、教えていただけると幸いです。

 

どのような配慮を求められているのかを知るため、そしてこのブログを書くため、少数ではありますがインターネットより情報を収集してみました。
簡単な検索ワードで大量の記事なりブログなりを発見でき、この問題が私が思っていたよりも大きな問題であることが分かりました。
主にマイノリティの方たちへの基本的な知識から、企業や行政、教育機関などがどのように配慮し対応しているかを中心に学び、恥ずかしながら今更発見したことも多く、今後の活動の参考になりました。
私自身の再確認や今後の新メンバーへの共有に使用するため、それらの一部のリンクをこちらへ貼っておきます。

www.asahi.com

 

www.change.org

 

news.yahoo.co.jp

 

www.nhk.or.jp

 

note.com

 

tokyorainbowpride.com

 

www.weddingpark.net

 

https://www.amnesty.or.jp/human-rights/topic/lgbt/#ihrl

http://web.icu.ac.jp/cgs/docs/TgSatICU.pdf

 

これまでの活動で、こちらの無配慮で不快だったり煩わしい思いをされた方に、改めてお詫び申し上げます。
もし学びやすい環境だと思っていただければ当団体コンテンツへの参加や申し込みを是非お待ちしております。
拙い点もこれまで同様多々あるとは思いますが柔軟に修正し対応していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

科学哲学がテーマの勉強会運営のお手伝い

このたび、私が代表を務める(といってもメンバーは私1人ですが)裏難波大學にて、
これまでは自主ゼミにしろ勉強会にしろ数学ばかりでしたが、今回は哲学、とくに科学哲学、その中の「線引き問題」をテーマとした勉強会を週に1回、計6回に渡り開催しました。

 

今回は企画をした私にとっても裏難波大學にとって初めてなことが多い勉強会でした。
初めてだったこととしては

  • 今まではコンテンツの提供、つまり発表者や講師といった立場は全て私だったが、今回は知人に依頼したこと
  • 上述した通り、数学以外のテーマを扱ったこと
  • 少額ではあったが、コンテンツ提供者に謝礼を渡せたこと

の3つです。

これらに触れながら

  • 経緯・活動報告
  • 私の感想
  • 講師を担当した方の感想
  • 今後の展望

の4つについて書きたいと思います。


コンテンツを提供してもらった、つまり今回の勉強会にて講師を務めていただい方は以降「Yさん」と書くことにします。


Yさんの感想は、当の本人に書いてもらい、こちらにコピペしたものになります。
ちなみにこの感想文はYさんの感想を受け取った後に書いています。

 

勉強会全体のテーマは「科学って何だろう」となっています。

各回の細かな内容や、Yさんについては告知用ページが詳しいのでリンクを貼っておきます。こちらも是非見て頂いて勉強会の様子などイメージしてもらえればと思います。

kokucheese.com

 

 

 

経緯・活動報告


最初に書いた通り今までは形式は勉強会・教室・プレゼン多々あれど、テーマは全て数学、しかも私自身が提供できる狭い範囲の数学だけでした。
それもこれも私が数学もそれ以外の学問に対してでも、他の人になかなかこの活動に携わってもらう決断が出来なかったからということに原因があります。

裏難波大學の営利的活動に関わる方には、専門性も大事ですが、それなりの責任感をコンテンツ全体に持ってほしいと考えたからです。
でも責任感を一方的に要求するだけではなく、それに見合ったフィードバック(お金や感想、そこからの指摘・助言や気づきなどなど)がなければいけません。
それらをお渡しする用意も、どのように仕組みを作るのかもそこまでが考えられていませんでした。
また、今回依頼したYさんも含め既に裏難波大學の活動に関わってくれていた方は、この責任感については問題ない、むしろありすぎるくらいだと考えていたので、それに見合うフィードバックがあるようなイベントを作れるのかどうかの自信がなかったです。


Yさんは大学学部生3年の頃からの知り合いで、初期から裏難波大學の活動にも興味を持っていただいていて、いくつかのイベント・勉強会での参加者でもありました。
なので、私の活動方針・理念なども常に共有する機会がありました。
活動記録の方が詳しいですが、Yさんは哲学、特に分析哲学が専門であり、現在大阪の大学院の博士課程に在籍されています。
つまり彼にコンテンツ提供を任せるということは、裏難波大學として初の数学以外のコンテンツになるわけですが、そろそろそういったものにも挑戦してみたかったことも依頼した理由の1つになっています。


この依頼をしたのは2019年4月くらいであり、大人向け数学教室という営利的なコンテンツの始動から半年以上経っている頃でした。
つまり私自身、学問をサービスとして提供し、それに対して謝礼を頂くということを少なからず経験した状態でした。
そこからの学んだことは、専門性を活かした活動であればあるほど、そして参加者のことを考えれば考えるほど、それなりにきちんとした額の謝礼をもらわなければならないということでした。
今まではコンテンツ提供者が私自身であり、それ以外の企画・告知・運営・事後処理も含めて全て自分一人で完結していましたから、その仕組みは非常にシンプルでした。
しかし今回はコンテンツ提供は他の方に任せ、それ以外の仕事のほとんどはこちらが担当ということで、その謝礼の分配はどうするのか、そして場所選び、少なくとも大学に頼らない勉強会では一番ネックになる問題ですが、以前のイベント(3か月公理的集合論勉強会)の時は、数学、そしてそれに理解のある企業様からの出資がありましたが、
今回は頼ることができません。
なのでなるべく利益を得つつ、勉強会ができるだけの最低限のアクセス・施設を探す必要がありました。
なので、謝礼にしても、各参加者からの参加費をそれなりに大きくし、上記のような私にも分配されるように考えたのですが、考えれば考えるほど難しくなってしまい、
今回は私個人はボランティアでやって、参加費の合計から会場費を引いたものを全額Yさんへお渡しすることにしました。
もちろんのタダで労働力を提供するのは良くないとも思いつつも、実は今回、テーマ・内容についてはかなりこちらの意向を取り入れてもらえたので、私自身の勉強代と思うことにしました。
ただ完成した内容を見ると、値段設定についてもうちょっと考える余地があり、
今回は私自身のプロディース能力が足らなかったことを痛感しました。


今回、哲学をテーマすることは決まっていましたが、その中でも細かくどのようなテーマにするかは決まっていませんでした。
私自身学部生時代から科学哲学、そしてその中の「線引き問題」に興味があり、書籍は何冊か持っていたもののなかなか読み進めることはできないでいました。
Yさんは哲学が専攻分野ではありますが、その中の科学哲学は専門ではありませんでした。
自分としても科学哲学の話をそれなりに専門に近い(少なくとも私よりははるかに近い)方から聞ける良い機会だと思い、このテーマでやってもらえないかと依頼しました。
それを快く引き受けていただき、大学で実際に授業を受けるような楽しさがありました。
ボランティアでもいいやと思えたのも、自分が学びたいテーマにしてもらったことが大きいです。
あと意識したのは利益の最大化ですが、場所代はなるべく安くしようと考え、大人向け数学教室を通じて知り合った方から教えてもらった、イベント使用も可能な、とあるコワーキングスペースを使うことにしました。
数学の勉強会をやるには若干大きさ・設備が足りない印象ですが、スライドが映写できれば十分であるとYさんから聞いていたので、その場所をイベントで使う全6回分確保することができました。
この場所は本町に位置しており、駅からも近いです。
これによって参加費は1500円にしつつ、そのうち1000円をYさんに渡せることになりました。
何度も言いますが、もっとお渡ししたかったです。。。

活動記録はこちらからご覧になれます。
テーマの詳細、勉強会の内容などなど勉強会そのものについてもまとめてあります。

 

告知情報を見た方ならば、このそれぞれの勉強会の後に同じ会場にて別の裏難波大學のイベントを開催する予定がありました。
1つは交流イベントで、もう1つはプレゼンイベントです。
しかし会場の利用時間の関係で開催することができませんでした。
別日にするなど何らかの方法で開催することも考えたのですが、私自身の4月から始まった本業である学業の方も忙しくなり、この3か月はこの哲学勉強会(と大人向け数学教室)に活動を絞ることにしました。
今後もやっていきたいイベントの形式なのですが、しばらくは手が出せそうにありません。。。

 

私の感想


勉強会に参加した一参加者としての視点の含めながら、感想を書いていきたいと思います。
Yさんの感想文にもある通り、この勉強会の前の元ネタになったのが、2019年の1月から3か月間毎週日曜に開催した公理的集合論勉強会です。

 

これに参加者の1人としてほぼ全会を参加してれたのがYさんでした。
この勉強会、Yさんの知り合いの方も参加されていて、Yさん自身も含めたその参加者の様子から、私自身が設定した「非数学系の人に数学を勉強するとはどのような営みなのかを伝える」という目的を、非常に評価してくれました。
それについては、その勉強会後のあった際に「自分も哲学であのような勉強会をやりたい」と聞いていたので、これだけこちらの活動に対して理解のある人ならば、今まで誰かにコンテンツ提供を任せることを躊躇していた自分も、任せてみよう、いや任せたいという風に思えました。
もちろん学問的なイベントのコンテンツ提供者として、その知識量・勉強量・専門性の高さなどは大事ですが、それと同じくらい大切だと思うのは「参加者にこう感じてほしい・こうなってほしい」とどれだけ思えるかだと考えます。
いくら学問的に価値のある内容でも、単に「知ってほしい・面白いでしょ?」くらいの意欲では、同分野の人はなんとか納得させられても、異分野・初学者・門外漢な人に満足してもらうことは難しく、また謝礼を頂くことも、その参加者からより良いフィードバックをもらうことも難しいでしょう。
もちろんこういったことを私の中で考えるようになったのも最近の話です。
これをしっかりと意識しつつも、学問的に価値のある勉強会をYさんなら作ってくれるという確信のもと、お任せすることにしました。

 

勉強会の内容そのものについてですが、まず「線引き問題」が科学哲学において(一部の哲学者から)重要視、または興味の対象とされなくなった過程が知れたのは良かったです。
もちろん今でもこの問題に取り組む研究者もいると勉強会中に聞きましたが、その方たちも「線引き問題」の難しさを理解しつつも、
今の社会に合わせた動機を持っていることが知れました。
「線引き問題」がたどった歴史、その中で生まれは消えた(人気がなくなった?)考え方、そして何故消えたのか(もちろん「線引き問題」で役に立たなかっただけで、他の哲学・それ以外の学問に応用された例もある)を
時間の許す限り丁寧に解説してもらうことで、私の中でもかなり多くの発見がありました。


個人的に面白かった回は、初回のたくさんの疑似科学似非科学の紹介するFeyerabendについての解説があった回でしょうか。
初回の方では、ある程度は知っているつもりでしたが、市民権を得ているか・認知度の高さを問わずたくさんの科学っぽくないものがあることに驚きました。
Feyerabendについては、ひと段落した折に、彼のやったことについてもう少し詳しく勉強してみたくなりました。

 

最終回ではYさんの専門ではない「線引き問題」という話題に対してどのような点で興味があるのか?さらにどのようなスタンスで学んできたのかを知ることができました。

これがこの勉強会で一番大事なことだったと思います。

(すごく時間はかかるし教えてもらうほど正しく理解できるとは限りませんが)ある内容について学ぶ(学べたと勘違いする)ことだけなら一人でもできます。

でもある学問について(今回は哲学)その専門家から、普段どのようにその学問に向かい考えているかを知ることは一人では絶対にできません。

私が先の勉強会でも無限化した囚人と帽子のパズルについて話題と、それに対して自分がどのように研究しているかといったことを多く盛り込みました。

無限帽子パズル自体がそもそも日本で研究しているのは私と指導教官くらいだと思われ、故にこれを内容にいれること自体希少で価値があると思いますが、さらにそれについてどのように研究しているかといった情報はさらに価値があると思います。

なぜなら通常そのような情報は研究者同士の雑談などでしか共有されない情報だからです。

なんらかの市民講演等でそのような情報を提示されることもありますが、そうなると時間制限などの理由でその学問について知識のほとんど伝えないままだったりします。

今回は5回にわたって知識を共有してもらい理解補助の議論もしたうえで、その学問への向かい方を知れたのは非常に有意義でした。

 

現在当団体の理念や活動方針を明文化しようとしてますが、その中で仮にメンバーを増やすならば、その人たちにある程度の科学に対するリテラシーを求めることが必要だと思っています。

それについての1つの方法論が、この科学哲学勉強会であり、この目的に向くのかどうか判断する良い材料にもなりました。
今後、ここで得た知識は単に私の知的好奇心を満たすためだけでなく、「科学をキチンと啓蒙する」という裏難波大學の今考えている目的にも十分に役に立つことだと思います。

 

上の方でボランティアでやる云々のケチ臭いことをダラダラ書いていますが、むしろそれ以上にもう少し自分からも個別に謝礼を出さねばと思わせてくれました。
故に他の参加者がどう思ったにせよ、今回提供して頂いたコンテンツは、私の想像以上の出来であり、後から参加費を変えるわけにはいきませんでしたが、
それなりの金額に最初から設定しなかった自分に落ち度があったと感じます。
ただ会場は少し老朽化していたので、使いやすさなども含めると仕方ない点もあったかなと思います。
やはり綺麗で使いやすければやすいほど会場費は上がるものなので、適切なバランス感覚は身に着け行きたいところです。

 

Yさんにとっても、色々と初めてなことが多かったと思います。
今まで同じ界隈の人たちとやる勉強会とは、参加者の様相という点でも、用意しなくてはいけないコンテンツの違いという点でも、そして謝礼がでる・それに伴う責任があるという点でも、違うことも多かったと思います。
これは謝礼がでないと、Yさんが「手を抜く」ような人であるという意味ではありません。
自分としては、自分と同じような経験をこの裏難波大學の活動に興味のある1人と体験してもらえたのは、そしてそこから得たことを聞けるのは、非常に価値のあるものでした。
今後の活動に是非とも活かしていきたいです。

 

Yさんの感想文


Yさんから頂いた感想文を誤字脱字くらいは訂正しましたが、ほぼ原文のまま載せます。

発表者が今回の一連の講座を引き受けたのは、裏難波大學のsoujiさんが行った3ヶ月間公理的集合論入門勉強会が面白かったことに影響を受けたのと、学問にかかわる勉強会がしたいというsoujiさんの話があったからでした。
最初は外部に公開する勉強会ではなかったので、これは大変なことになったと気づいたのは途中からでした。
まず講義をする内容についての全体的知識を入れるのに100時間ほどかけました。
それとは別に毎回の講義の準備に20から30時間ほどをかけました。
全体として準備時間に250時間ほどかかったと思います。
講座をするために本来必要な時間としては、桁がいくつか足りていない気がします。
今回の講座を行った2ヶ月間、勉強不足から来る焦燥感が常にありました。
この強い焦燥感は、講座が終わった今も消えていません。
今回の講座のきっかけとなったsoujiさんの勉強会では、数学科で行われている研究というのがどういうものかを見せるというコンセプトが特徴的でした。
それが面白いと思ったので、ぜひ自分でもやってみようと思いましたが、哲学では(あるいは私の能力では)どうやらそれは難しいという感じがしました。
哲学のテーゼを支える論証を理解することはもちろん大事ですが、むしろそれをどうやって反論するか、あるいはどうやって反論を防ぐかということを、実際に体験していくなかで身につけていくことのほうが、哲学で行われていることの中では大事な部分であると私は感じます。
その体験の部分を予備知識無しで提供するということはとても難しいように感じました。
ある程度の型と知識を身に着けていないと哲学で実際に行われている議論の体験にはならないと私は思います。
なので実際に議論を行ってもらうのではなく、議論を見ることでどういうものなのかというイメージを伝えるということを目標にしました。
反論で崩されない論証を構築するという作業は思ったより大変そうだという感じを伝えようとしたのです。
また、soujiさんの勉強会は入門書や入門講義では聞けない内容が入っており、それもできれば自分の講座で実現させたいと思っていました。
そこで、5回目と6回目で扱う1本の論文を理解するために、1から4回目で教科書的な知識を導入するという構成をとりました。
この目的のために話題を限定したので、告知文にも書きましたが、一連の講座は科学哲学という大きな分野全体のバランスのとれた紹介にはなっていません。
また線引き問題という領域に限っても、その論文以降の展開についてはあまり詳しく取り上げることはできませんでした。
ただ、予備知識無しからある論文の内容を理解するという点はそれなりに価値があったのではないかと思っています。
この分野にあまり詳しくない人を想定していたので、哲学に出てくる基礎的な語彙もできるだけ説明するように心がけました。
また、考えの説明だけでなく、なぜそのような考え方が出てきたのかという説明もできるだけ多くしようとしました。
哲学での暗黙の前提を、それを仮定せずに説明しようともしました。
これらをやりきれたかどうかはわからないですが、こういったことは、哲学科の中ではなかなかできないので、
かなり面白い体験だったと感じています。
今回のように話題を絞った長い時間での発表であれば、
そういうこともできるという感覚があったのは今回よかったことだったと感じています。


今後の展望


今回単なる勉強会としては非常に良いものになりましたが、商業的、すなわちキチンとした額を参加者からいただけるかどうかという視点に立てば、個人的には(偉そうで本当に申し訳ないですが)まだ足りないところがあったと思います。
この記事を書いた後に、Yさんとは「今回得られた経験・知識を営利的な活動に活かせるコンテンツにするにはどうすればよいか?」という点で相談する機会を設けるつもりです。


既に数学においては、大人向け数学教室以外にも、営利的な目線に持つプロジェクト(大人向け数学講座のこと)を開始したところであり、
Yさんが望むならば(今のところまた挑戦したいと聞いています)、より参加者、すなわちお金を出していただく人たちの目線にたった勉強会・講座作りを目標として、活動の企画も進めていきたいと思います。

 

また今回もう1人哲学専攻の博士課程院生にもこの勉強会に参加しもらっており、その人もこの裏難波大學の活動にそろそろ本格的に参加してもらう予定になっています。


このような形で、哲学以外の非数学系の学問においても、啓蒙的な活動に興味ある専門知識を有する方たちと協力しながら、そして理念にある経済支援を最大化しつつ、参加者に満足してもらえるような取り組み・そして仕組みをこれからも作っていきたいと思います。

ハリーポッターの映画だけ見せてくれなかった両親

2019年9月は大変忙しい一か月でした。
とくに用事が詰まっていたというよりは、初めてなことが多かったため要領を得ず疲れたといったところでしょうか。
静岡での数学基礎論サマースクール
その最中での留学のための書類作成
金沢での日本数学会での発表
そして大人向け数学講座の打ち合わせ

突然舞い込んだ学生プレゼン

徐々に楽しくなっていく毎週の数学基礎論勉強会などなど。
なんとかこれらを終え、日々書き溜めている記事の1つでも久しぶりに推敲しようと思いました。

 

よく数学や、私の啓蒙活動に関するものが多かったですが、今回は肩の力を抜いて思い出話でも書いてみます。

 

小学生のころ、ハリーポッターブーム真っただ中でした。
自分が読みだしたのは3巻が発売され映画が放映されたあたりです。
私は小説などをよく読むような少年ではなかったです。
図書館にあるかいけつゾロリ、そしてはだしのゲン、そして○○のひみつシリーズを好んで読んでいました。
そんな自分も他の少年少女たちよろしくハリーポッターにハマりました。

 

両親は世間の教育ママのようなタイプではなかったですが、教育には何かしらの思い入れがあったようです。
なのでハリーポッターシリーズも子供向けだと軽く見つつも、一巻をどんな漫画よりも真剣に読む私を見てこのシリーズだけは快く買ってくれました。
どこかの記事で書いたかもしれませんが、両親は私が中学2年くらいまでは2人で朝から晩までイタリア料理屋を経営しており、私は小学1年からかぎっ子でした。
幸い自宅とお店の距離は近く、晩御飯は自宅ではなくお店の方で食べてました。
大体来客のピークが過ぎたあたり、20時くらいに自宅に電話がかかり、そこからお店に向かって、接客の合間に晩御飯を作ってもらい、お店の背の高さがあっていないカウンターの隅っこで食べて、帰って寝る、といった生活でした。
ただ完璧にお客さんの動向を読めるわけでもなく、お店に到着したものの、急に忙しくなって、ご飯が作れなくなり長めに待つこともよくありました。
よく空腹時にイライラする人がいるようですが、自分はこの時に我慢することを覚えたからか、あまりそういうことはありません。
しかしただ待っているのもつまらないし、お店には私が関心を持つものもなかった(テレビはあったけど営業中は付けない方針)ですから、家から何か持っていくことになります。
ただあまりものを広げるわけにもいかないですし、当時はまだ携帯ゲーム機はバックライトがなかったので少し暗めの店内でのプレイに向かず、
嫌々宿題をやることも多かったです。


そんな中、親にも特に責められず、そしていつでもどこでも中断・再開できる読書にハマりました。
当時お気に入りにジージャンがあって、これは内ポケットと呼ぶには小さすぎるほど大きなポケットが付いていました。
なんとハリーポッターの本が1冊はすっぽり入ります。
当時はまだ文庫版のような小さなものはなかったです。
そしてそんなポケットが左右に2つ付いています。
なので4巻以降の上下巻タイプでも、特に持ち物を持たず持ち運ぶことができました。
なので電話が鳴ったら2冊をポケットに忍ばせ、鍵だけもってお店に向かいました。
学校の図書館にも置かれましたが、私は家から自分のものを持って行って給食の準備時間という些細な時間でも読んでいたのを覚えています。

 

とくにお小遣いが多かったわけでもなかったので、映画のDVDやハリーポッターを題材にしたTVゲームを買うことはなかったです。
ただ中学校になって電車通学になり行動範囲も大きくなったからか、他の子よりも多額のお小遣いをもらうことになり、
日本橋のお店を歩き回って安いDVDやゲームを掘り当てるのを楽しみの一つにしていました。
今は見る影もありませんが、あの頃のオタク街は非常に刺激的な場所でした。
高校生の頃は怪しいビルの8階にあるカードショップに毎日にように通ってました。
そんな頃には、飲めもしないコーヒーを入れて、ハリーポッターのDVDを見ながら、無駄に徹夜したことも多々あります。

 

しかしそういった原作以外のハリーポッターに関するものは両親に買ってもらうことはありませんでした。
ゲームはまだしも映画を見に行くお金や、DVDを買うお金ももらえることはなかったです。
もちろん本を買ってもらえるだけありがたいとは思っています。
両親に「小説はいいのに映画はなぜダメなのか」と問い詰めたことがあります。
そして変な話、コナンは映画代くれたんですよね。
つまりハリーポッターはとくに私に映画を見せたくなかったようです。

 

ではなぜハリーポッターだけダメなのか、それは私の頭の中にある物語・登場人物のイメージが壊れるからということでした。

 

物語を読んだ人は分かると思いますが、その物語に引き込まれたとき、登場人物の声が聞こえ、物語の状況が文章を通じて頭の中に浮かび上がります。
それはとくに外部から追加の情報がない間は自分の中に固定されます。
しかしひとたび映画など原作に近い再現が行われている創作物を見てしまえば、頭の中にあったイメージはそれに上書きされてしまいます。
映画を見る前、小学生の自分がどのように登場人物たちを、作中に現れる建物を、そして魔法生物をどのように想像していたのかはもう思い出すことはできません。

 

今でも少し時間が空いたとき、つい本棚にあるハリーポッターを読んでしまうことがありますが、
このとき脳内で再生されるのは、映画の中にあった登場人物で、建物で、生物でです。

 

両親は自分で考えることに重きをおいていたのでしょう。
自分で自分を楽しませることといってもいいかもしれません。
よくテーマパークを私の前で酷評することが多く(当時USJができたばかりでした)、保育園時代を除きそういった娯楽施設には連れて行ってくれたことがなかったです。
その理由は「楽しましてくれると分かっている場所に行き、向こうが望むように楽しむ・泣くことの何が良いことなのか」だったと思います。
子供としては単に興味があって見たいだけなのに、そういう答えが返ってきては、上手に反論することができませんでした。
ただ、彼らなりに良いテーマパークもあったようで、下水道記念館とか関西圏にある教育寄りの施設にはよく連れて行ってくれました。
それはそれで楽しかったのを覚えています。
4年生くらいに毎週日記を提出する習慣が担任にあって、そのネタ作りにも助かりました。

 

今でも時々、私の中でハリーポッター観を育てることの大事さは、他にどのように説明できるのか考えてしまいます。
確かに一見良い意見に思います。
でもそのような読み方をどのようにして両親は身に着け、その考えに至ったのでしょうか。
昔から新しい経済活動を始めて、それで初収入を得たとき必ず両親、そしてその活動の協力者へご飯をご馳走するようにしています。
ついでに普段行こうとは思わないような高いお店を行くのを楽しみにしています。
最初に書いた数学講座が終われば今までにない金額を稼ぐことができそうです。
その後改めて両親に聞いてみてもいいかもしれません。

とくにまとまりがなかったけど、おしまい。

3か月間公理的集合論入門勉強会の振り返り ー参加者の感想まとめ付きー

去る2019年1月6日から3月31日の毎週日曜に大阪のなんばにて裏難波大學主催で公理的集合論入門勉強会と称した勉強会を運営してきました。
本当は終わった後すぐに記事にするつもりでしたが、様々な用事や新しい生活(主に博士課程へ進学したこと)に慣れるのに忙しくなかなかまとまった時間にエディタを開くことができませんでした。
あと23時を超えると(早ければ19時くらいから)お酒を飲みたくなるので、なかなか筆が進みませんでした。
GWに入った今、一気に書き溜めていた下書きをまとめていってます。
長期に渡る対外的な勉強会の開催・運営は私の中での初めての経験でしたので、しっかりと振り返っていきたいと思います。

 

イベント概要・活動記録


どのような内容を扱ったのか、またどのように進んでいったのかは以下のリンクから見れる活動記録PDFが参考になるかと思います。

 

https://www.dropbox.com/home?preview=report_and_rule.pdf


これは毎回終わるたびに更新し参加者含めて一般公開していました。

予備日を設けているのは、その当時入退院を繰り返していた祖母関連の用事でどこか1つは休まざるをえないと考えていたからです。
事実お医者様から「そろそろ」と聞いていて、そしてそれが的中し、1回法事でお休みすることになりました。
また私自身が酷い風邪を引いてしまったのもあり、プラスもう1回お休みしました。

 

動機・目的とその結果


動機も上記PDFには記載していますが、やっている間にその動機が具体化したもの、そしてそれを意識した取り組み・行動があったので改めてまとめなおしてみます。


動機1つ目:院試対策


これは上記活動記録にも書いてありました。
この勉強会開催中の2月中盤に大学院試験があり、試験科目は数学と英語だけ。そして数学は筆記試験ではなく、修士時代を含めた自身の研究内容を在籍教員たちの前で30分間で発表する、つまり修論発表会のようなものでした。
修士論文はいつもTwitterで呟いているような「囚人と帽子のパズル」の無限化を扱いました。
なので修士論文の範囲内でも帽子パズルの内容を思い出し、また修論発表会のような専門家の質問に答えられるようにならなくてはいけません。
というわけで、扱う内容に帽子パズルを含めることにしました。
またやる前から、この帽子パズルを集合論の導入の1つのツールとして使えないだろうかと薄々ですが考えていたのもあります。いずれ「帽子パズルから学ぶ素朴集合論」なんて集中講義とかやれたら面白そうだなとか妄想しております。
一番素朴な有限の範囲内の帽子パズルは論理的思考のみで解けます。
そこからスタートして無限に拡張した際に、いかに集合論が囚人たちの必勝戦略構築に役に立つかを上手く説明できれば興味を持ってもらえるのではと。
なので数学化した帽子パズルを数学初学者に説明する経験を積むための良い機会にもなりました。
この目的意識のもと、帽子パズルのテキストや私の過去の勉強ノートを参考にしながら、ほぼ全会に渡って発表していきましたが、いかに修士時代の自分が帽子パズルについて理解できていないか、また証明に隙があるか再認識しました。
本格的に研究されだしたのも21世紀あたりからと比較的新しい分野で、まだ日本語での本格的なテキストも存在せず、おそらく研究室活動で扱ったのも日本ならば私一人です(別にそんな状況自体は珍しくないけど)。
その中で、その議論に対して正確にツッコミをいれてくれる存在も少なく、修士論文を今見てみるとかなり理解不足だったと感じました。
もちろんそれ自体はこれから進学しようとする自分にとって非常に良い経験なのですが、1つかなり冷や汗ものの出来事がありました。
修士論文では、いくつかテキストや論文にある定理を拡張したわけですが、当然自分よりはるかに優れている数学者が残した重箱の隅にはそれなりに理由があるはずです。
そんな重箱の隅を自分でうまくつつけたと思って書いた証明でしたが、勉強会の発表中にその証明が間違っている可能性に気付きました。
既にある程度の査読などを通り出版された論文を元にした証明が間違っていたならば、間違えた原因はおそらくこちらにあると推測できますが、今回証明が間違っていると気づいたのは、自分が証明できたと思っていただけの定理の証明。
なので本来そのような拡張はすることができず、数学者たちは「拡張しなかった」わけではなく、「拡張できなかった」のではと疑うのは当然だと思います。
そのことに発表中に気付いてしまい、とりあえずは予習してきたテキストに載っている証明を中心にやって、その日は終了し、その日参加してくれていた大学院時代の同期の人と残って議論しながらもう一度証明を一からやり直してみました。
おそらく結論、つまり自分が証明できたと思った事実は間違っていませんが、論文に載せた証明は誤解を招きやすいものになっていることが分かりました。
その証明を元に予習した自分が、その通りに誤解して証明してしまった感じです、3年前の自分にやられてしまいました。。。
もちろんきちんと証明できていることの確認はもう一度博士課程のどこかですることになりますが、とりあえず自分の中で間違っていないと分かって一安心でした。
参加者からすれば完全に温度差があった出来事だと思いますが。。。。
ちなみにそのことをTwitterにて呟いたところ指導教官であった先生(Twitter上で相互フォローになっているので)から論文の確認不足を謝られてしまいました。。。
そんな意図で発言したわけでないにせよ、そのように捉えられてしまって仕方なかったなぁと。
しかしここで「修士以上の研究内容については自分自身で厳密性の確認を行うしかない」ということを再認識しました。
先に述べた通り、日本にそんなに相談相手がいない以上、その証明があっているかどうかの最終防衛ラインになるのは指導教官ではなく自分です。
そして自分はそのような状況をどうやら楽しめるということに気付きました。
責任もめんどくささもあるものの、日本における帽子パズルの記法や定義のデファクトスタンダードを作れることの楽しさもあると思います。
この出来事から証明を見直す技術がもう一段回高まったと思いますし、そういった意味では(まぁ発表者なので当たり前ですけど)今回知識以外の面で一番数学的に得るものがあったのは自分かもしれません。
ここまでのこともあってか試験では何一つ引け目を感じることなく発表することができました。

 

動機2つ目:インプット力強化

名前がダサい。。。ようは自学自習する能力を鍛えたいということです。
この勉強会は13時から大体18時30分くらい(1番長いときで20時30分)まで、休憩の合計時間は1時間くらいでした。
しかし別の記事に書きましたが、同じ日曜日の10時から12時までくらいで位相空間論自主ゼミでも発表していました。
つまりこの時期の日曜日は大体6時間から8時間くらい発表してました。
それを知っている人からは「それを毎週やると、発表はともかく3つ分のテーマの予習時間をとれるのか?」と言われてました。
この時期の自分がやるべきことって祖母の介護の手伝い・法事や週に一度の立ちのみ屋お手伝い・週に何度かの大人向け数学教室くらいで時間はとりやすかったです。
また試験勉強もあったわけですが、先に書いた通りこの勉強会がそれを兼ねていたため、この勉強会の予習以外に取り組むことは普通の社会人や学生に比べて少ない状況でした。
発表するかどうかは別として博士課程ともなれば毎週8時間くらい話せるような知識の吸収を出来なければならないと(勝手に)(個人的に)思っていて、この勉強会はあえて自分に負荷をかけることでそのような勉強量に自分を慣らしていこうと考えたからです。
最初はなかなかしんどかったですが、後半になってくるとペースがつかめてきてある程度余裕を持ちながら進めていけたと思います。
まぁこれ以外の数学イベントに参加・主催したり、予習以外の数学に手を出す余裕もなかったので、この経験で自分のキャパシティーについては把握できましたし、今後の学業と裏難波大學の活動の両立のための参考になると思います。

 

動機3つ目:長期的な勉強会運営経験を得たい


今まで単発のプレゼンイベントや交流系イベントの開催経験はありました。
また自主ゼミも1年にわたってやりましたが、あくまでクローズドな形で進行もマイペースだったため、まったく知らない人にシラバス的なものを提示したうえで進めていくような勉強会をやったことはありませんでした。
以下の記事に書いたように、研究者の方が試行錯誤して授業計画を組み立てて進行していく様子に感銘を受け自分もやってみたくなったというのが理由の1つとしてありました。

 

souji0426.hatenablog.com


もう1つは自分なりにイベント開催のノウハウをまた違う形で身につけたいということです。
学問を扱うようなイベントについて多少なりとも経験が増えてきて、そういったイベントの参加者・興味をもつ方は「深く学ぶこと」「浅く学ぶこと」「学問関係者との交流」の3つが、個人個人異なる配分で混ざっているのではないかと思いました。
今まで自分が他のイベントに行って次回も行きたいなと思わなかったとき、その会が提供できるとしていたものの比率とこちらが予想した比率が自分のものと違うかった時ではないかと考えました。


例えば「深く学ぶこと」ができると宣伝しつつ入門書レベルで終わってしまったり、「浅く学ぶこと」といいつつ初学者向けでなく難しい内容が多かったりとか。
もちろん難易度調整の難しさはいやほど分かるので、そこでミスマッチがあっても今ならそこまでなんとも思いませんが、色んなイベントに参加しだした当初の自分は困惑しました。


交流に関しては、運営が丸投げ、つまり懇親会の場所だけ用意して後は勝手に盛り上がってくださいみたいな形だったり。
それだけならまぁ精神ポイント消費するけどこちらから積極的に話しかけていけばいいだけなんですが、すでにある内輪で絡むばかりで、運営もその中に入ってしまってどうしようもなかったときは身内の打ち上げに懇親会費とるなと思いっちゃいました。。。これは数学系イベントであった話ではないですけど、ダメな懇親会として参考にしました。


もちろん会や勉強会を開く目的は様々でこちらが対象外だった可能性は大いにあるのですが、宣伝している部分に関しては納得してもらえるようなイベントは開催できないものかと考えてました。
自分の過去を振り返ると「浅く学ぶこと」「学問関係者との交流」を理念においたイベントは開催してきましたが、「深く学ぶこと」をメインにしたイベント、すなわち勉強会は開催したことなかったので挑戦したかったというもう1つの理由があります。
すなわちここで身につけたいノウハウとはそういったものになります。


しかしイベントを始めた当初はその3要素とかについて全く考えておらず、最初の自分のイベント説明の仕方では残り2つの要素に期待を持った方も参加申し込みしているのではと感じました。
なのでイベント開始時に活動記録に書いたような開催目的を明確に伝えた上でスタートし、他の要素はどのように補完していくかはやりながら考えることになりました。
まず「広く浅く」に関しては集合論・数理論理学に対しては参考テキスト以外にも初学者が興味もってくれそうな文献の紹介で補いました。
たとえば集合論の歴史が知りたいならコレ、選択公理について知りたいならコレ、そもそも論理学についての入門書が知りたいならコレがおススメですといった具合に。
そして帽子パズルに関してもパズルとして興味を持ってくれた方には、帽子パズルが載っていて日本語で書かれているものを紹介したりしました。
ちょうど2018年の数学セミナー9月号で帽子パズルが取り上げられたことがあったので助かりました。
ちなみにそのパズルも無限化することが可能で、無限化したものは無限帽子パズルの中でも有名な定理になっていて、帽子パズルパートにてきちんと証明を発表することも出来たので良かったです。


そして「交流」という要素については徐々に取り組んでいきました。
もともと最大10人という少人数に設定したのは、私が顔を見ながら発表できる限界がこれぐらいだろうと予想したからです。
「入門勉強会」と称しつつ一部の初学者を超えた方(3人ほどいたので)に合わせてしまえば台無しなので、ノートをとっている様子などから疑問をもっていそうならばこちらから質問あるか聞いてみたりしてました。
また初日に突発的な懇親会を開けたのもあって(これは参加者の方の提案で)個々の数学勉強歴も把握していたので、なるべく初学者にターゲットを絞りながら質問の有無を伺っていました。
これも人数が多くなってしまえば記憶力のない自分にとっては難しいことだったと思うので、その点に関しても今回は良かったと思っています。
そしてそれくらいの少人数になったこととメンバーが固定されていたことで、他の参加者にとっても交流はしやすかったと思っています。
今回情報共有の方法としてSlackを導入してましたが、勉強会以外でのオンラインでの交流もできたと思っています。
当初は最初自己紹介だけ済ませて、あとは最終回だけやれば交流面に関しては大丈夫だと考えていましたが、
勉強会初日に参加者の提案で懇親会がありそれは6人で行きましたが、全員とまんべんなく話すには少し多い気がしたこともあって、懇親会もただ開くのではなく、2回に分けて少人数でやることにしました。
参加者の中には勉強会以前からの知り合い関係の方もいたので、その2人は懇親会に同時に参加する必要はあまりないのではないか?と。
なるべく初めて会う人と話せた方がせっかくのイベントとして意義があると考えて、メンバーの組み合わせもなるべく知り合いが被らないようにして調整しました
(まぁそもそも参加可能日を聞いてみたら大体そのようになっちゃったんですが)。

ともあれこれら3つの動機が活動中にも自分の中で変化・具体化されながら進んでいった感じになります。

 

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裏難波大學の活動は私の立ちのみ屋という場所代がかからない場所を使っていたことから、今まで参加費などについてはそこまで意識する必要がありませんでした。
しかし上記の動機から立ちのみ屋には入りきらない人数での勉強会を進学する前にやってみたいと思いがあったので、今回は例え私の講演料が0円だとしても場所代を人数割りしたものだけはいただかなくてはいけない状況でした。
しかし全員が全員、3か月間の日曜日が毎回空いているとも限らないわけですから、会によって参加人数が減ったことで参加者たちの負担額が増えるのもよくないなと思っていました。
その折、2018年4月より始めていた裏難波大學活動の1つ、位相空間論自主ゼミの参加者の方の所属企業「メダカカレッジ」様(HPはこちら http://www.medaka-college.com/)から出資をいただくことになりました。

位相空間論自主ゼミについてはこちらをどうぞ

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せめて場所代だけも浮かすことができればと思っていたので、全会の場所代に相当する金額をいただいたことで参加費を500円に固定することができました。
ちなみに500円にしたのは、無料ではさすがに良いイメージは持たれないと思ってしまったので場所代は必要ないものの頂戴することにしました。

今回出資にあたっていくつかの条件(といってもそこまで特別なものはなかったです)があったわけですが、やはり一番意識しなくてはいけなかったのは「数学的にきちんとした勉強会にしてほしい」という条件でした。
どのような結果が出れば「数学的にきちんとした」勉強会になるかですが、それは参加者の参加前の数学に関する知識・経験によって分けなくてはいけないと考えました。
単に参加者全員の知識を増やすだけならば参加者の知らなさそうな知識を詰め込みまくれば良いだけですが、それによって満足するのはある程度の事前知識・経験を持った人だけになる。
しかし初学者にとって優しい内容にしすぎれば先のような人は知識的にも経験的にもちょっとしか満足しない。
よって扱うテーマを「公理的集合論入門」「無限帽子パズル」の2つにしたことを活かし、集合論パートを初学者向け、帽子パズルをそれ以外向けに位置づけることにしました。
初学者向けではどのようにするかというと「数学系の人がどのように数学を勉強しているかを伝えること」を1番の目標に設定しました。
おそらく過度に難しくしたり、数学をある程度勉強した者同士で通用する証明の省略(「あとは帰納的にやればよい」とか「定義から明らか」とか)を見せてしまえば、一般の数学に通用しないような印象を与えかねないと思いました。


これまでかなり短い時間で門外漢相手に数学を扱ったプレゼンをすることで「数学とは○○なんだ(○○には哲学とか芸術とか宗教とか非数学的な分野が入る)」という間違った印象を与えることに少なからず加担してきた身として、今回のようにスポンサーがつき、かつ長時間の参加者のお時間を頂戴できるような機会では決してそのようなことにはなってならないと。
何度も言いますが、個人個人が数学をどのように感じるかに対して、それに賛同できなくとも放置はすれど攻撃をするような数学者は少ないと思います。
例えば誰か門外漢が「数学は芸術」と捉えていても、そう捉えているうちは数学的な新しい発見は極めて難しく「遠回りしているな」くらいしか思わないはず。
だから当の本人から「どうやったら数学的な証明ができるようになるか?」を相談されない限りは「数学が芸術」だなんて思っていてもなんとも感じない、人格者ならば攻撃までもしないとはず。
問題は自身の影響力・拡散力を顧みないで、不特定多数に「数学は○○」だなんて思わせるような活動の方です。
その行為によって当の本人が数学に向かって遠回りするだけでなく、それを信じてしまった人まで遠回りさせてしまう。
いや、それでもなお数学に向かってきてくれるならば、その誤解もいつかは解消されるかもしれない。でも「数学が芸術なのか、じゃあ私には合わないからいいや」となってしまえば、もしかしたらきちんと数学的方法論を身につけたならばその人が興味を持つような数学・その周辺分野の狭い一分野が見つかったかもしれない、そんな可能性を消してしまう。
「数学に関わる発言にそこまでのことをいちいち考えなくてはいけないのか」と言われればそれまでですが、これはそういう活動をに続けていきたい自分が持っておく意識だと思っています。
単なる勉強会にここまで考えたのも参加者一覧を見たとき、ほとんどが非数学科出身かつ文系出身、つまり理系すらほとんどいない状況でした。なのでいつものように勉強会を進めてしまえば、そもそも非数学系にとって楽しくないだろうし、楽しくなければ今後の数学の勉強を遠回りさせてしまうような印象を与えかねない。

ちなみにこのように考え方がまとまったのも勉強会期間中のツイートが伸びたことがきっかけになっています。

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集合論パートでは証明を時間が許す限り丁寧に行いました。最初はそれこそ量化子の説明から。量化子そのものが数理論理学の研究対象であるわけですがそれは2章で扱うことを触れながら、最初は単なる略記として使えるように・読めるようになってもらえればと思いました。
そのための参考文献も提示して、これからの議論をするさいにそのような数学の証明に現れるような用語の使用に慣れてもらえればと。
実際にその本を購入した方もいたようで、別に販売促進活動をしているわけではありませんが、数学の証明を読むにはそのような知識が必要なんだと理解したゆえの行動の表れとしてこちらとしては良い結果だと思っています。
このような形でスタートさせたからか、3回目くらいからは勉強会内で証明を進めるスピードも速くできるようになり、こちらとしても多くの内容を扱えるようになって良かったです。


帽子パズルパートでは、帽子パズルのような対象であっても数学者が本気で取り組めば、いかに面白く、公理的集合論の様々な概念を応用することで奥深いテーマになるかを伝えるよう努めました。
ここでいう面白さとは、私が感じる面白さのことです。
私が感じている帽子パズルの面白さとは、有限なパズルならば究極的には計算機を用いて必勝戦略を探すことができるの対し、無限なパズルでは囚人が無限にいるから面白いのではなく、この場合だと戦略が無限にあるため計算機でも必勝戦略を見つけるのは難しい、なのできちんと戦略を定義しそれが必勝であることを証明する必要がある点にあります。
囚人が無限というありえない状況ながらも数学的に必勝であることが証明できる、そこに私は面白さの1つがあると思います。
またその戦略を構築するにあたって、公理的集合論の様々な話題が関わってきます。選択公理連続体仮説・基数不変量などなど。そして数理論理学的手法を用いれば、そのような戦略の存在性がある仮定の下(例えばZF+従属選択公理)では証明不可能であることだって示せます。
私が修士時代の研究した流れを踏襲しながら、どのように問題意識をもって数学を楽しんでいるか、ある帽子パズルに関する数学的主張があったときどのように議論を進めていくか、それを伝えられたのではないかと思います。

この説明をしっかりするために帽子パズルノートには「帽子パズル研究の第一歩 」という節を書くことになりましたが、結構楽しかったです。
またこのあたりは少なくいた数学経験者の方たちにも初歩を飛び越えた内容で満足してもらえたと思います。

とくに連続体仮説を扱った帽子パズルの話はウケもよく発表していても楽しかったです。
無限帽子パズルを扱った日本(おそらく)最初の勉強会ですから既知の事実というのもなく新しい発見は初学者でない方にもあったと思います。

 

最終回の3月31日は新生活前ということもあって参加者は2名のみでした。

参加者の1人からは夏休みシーズンとかにやってくれたら全部参加できたのに!と言われました。
そのような人数になることは事前に分かっていたため、最終回手前でそのお二人に集合論関連で聞いてみたい話題について聞いておき、それを扱った発表をしました。
1つは強制法について知りたいとのことだったので、どのようにして証明を進めるのか、そしてどのような予備知識があれば実際に数学書で学ぶときに楽かを解説しました。
そしてもう1つは整数論内の未解決問題と絶対性についての話題でした。
ちょうど最終回の前日に私が京大での上記のテーマを扱った勉強会に参加していたので私としても勉強したことをすぐに復習できて良かったです。
そんな形で各々が知りたかったテーマを扱えたことは少人数ゆえの良さだったと思います。

 

私はこのように考え、それを達成できるよう行動したわけですが、参加者にそう思ってもらえたどうかに関しては、次の感想集を見て頂ければと思います。

 

参加者の方々のの感想集


勉強会修了の3週間ほど前から、参加者全員に感想文の提出をお願いしてました。
このとき、この感想文は匿名でこのような形で公開されることは伝えてありました。
本当はアンケートを作って数値評価をしようか思ってましたが、今回のような少人数ならばアンケートという形式にあわせずに各々が思ったとおりに書いていただいた方がより良い振り返り材料になると考えました。

参加者のうち数人は勉強会以前から親交があり勉強会終了前後の時期に直接感想を聞いたためここには感想は載ってません。
また順番に特に意味はありません。
また誤字脱字を訂正し・私へのお礼などの部分は割愛しています。
でも数学的に間違っている部分はそのままにしています。
別に晒しあげようとかではなく、私の伝達ミスを明らかにするためです。
また有難いことに改善点を提示して頂いた方もいたので、それもそのまま載せています。これは今後私以外の同様の勉強会をやろうとする方の参考になればと思って公開しています。もちろん私の反省材料でもあります。

 

1つ目


「最初は大学レベルの講義聞いてみたいって動機と帽子パズルオモシレーじゃんぐらいの気持ちで入りましたが、正直面食らいました
無限に可算、非可算、連続体仮説集合論の公理
自分には呪文でしたが授業と自分の勉強で呪文の読み書きは理解出来るようになったのは収穫でした
まだ入り口にも立ててませんがかろうじて平仮名は読めるようになったのと数学の議論と理論の組み立てがどのように行われてるのか分かったのが自分の収穫だったと思います」

 

2つ目


「今回の勉強会に参加する以前から集合論には興味があり,自分で素朴集合論の勉強を進めていました.
しかし公理的集合論は難しいイメージがあり,自分だけで勉強するには敷居が高いため,いつかは取り組んでみたいと思いつつもなかなかきっかけがありませんでした.
そんな中,今回の勉強会の存在をTwitterで知り,いい機会だと思い参加することにしました.
数学を専門的に学んでいたわけではないので,ついて行けるかどうか不安な気持ちもありましたが,意外にも公理的集合論の内容を理解することができ,楽しく勉強することができました.
毎回,丁寧な導入とモチベーションの説明がされるため,いまの勉強が何につながっているのかを意識することができたので,目的をもって勉強を進めることができました.
また,抽象的な議論が難しく感じることもありましたが,適宜,図や具体例などを示していただいたので,理解を深めることができました.
勉強会は終わりましたが,証明の細部を確認しながら自分でもう一度復習し,今後さらに発展的な内容にも取り組んでみたいと思っています.」

 

3つ目


「私は初学者ですが、一方通行の発表や講義ではなく、置いていかれる不安の少ない安心できる勉強会でした。
時間が長いので説明の詳しさが大学の授業よりも丁寧に感じられ、発表者がひとつの事柄を説明するたびに質問を受けつけてくれるので、理解できていなかったことを多く理解できたという満足感は高いものがあります。
また、slack上で参加者同士でもパズルに関する面白い話題が上がったり、知らなかった情報のやりとりがあったり、理解のしかたを確認したりと、勉強会の内容についてさまざま話せるのが放課後感がありよかったです。」

 

4つ目


「勉強会の今後の発展を願って思い付くままに以下感想をつづります。
感想は勉強会の形式と学習内容についての二つから成ります。
1.期間と時間について
集中勉強会は1月初めから3月末までの期間、一日当たりおよそ6時間実施されましたが、勉強内容の量を考えればこれより長くてもよかったと思います。
期間の短さとは反対に一日の勉強時間が長かったので期間を6か月、一日4時間くらいにすればより参加することに抵抗がないでしょう。
期間が長ければ初心者にとってじっくりと復習できる時間が確保できると思うのです。

2.講義の進め方について
理論や証明の全体像、モチベーションについての言及が各「セクション」のはじめにあったのが非常に良かった。
初心者がその理論や証明を理解しにくいのはそれらについての問題意識が希薄だからです。なぜその理論が必要なのか、その証明が何を目指しているのか、が分かりにくいからです。
全体像、モチベーションへの言及のおかげで理論や証明についてのイメージ直観をより容易に構築することができました。
また、帽子パズルでは「ノート」を毎回更新して提供してくれたので復習に大変役立ちました。
話だけ聞いているだけだったら、その場で理解できることしか残らないのです。
「ノート」で復習することによってイメージや直観を深化させたりふくらませたりすることができます。そして、その場ではなかった「気付き」も確保することができるのです。

3.集合論の内容について
順序数の作り方(拡大の仕方?)の理論と基数の作り方の理論の間にミゾがあるように感じました。
つまり順序数の理論の方は「後継者関数」でωまでやって、そのあとは基数理論の領域からℵ1とかℵ2の濃度を借りてきて持ち込む。
基数の理論の方は、ひとつには冪集合の基数についてのカントールの証明があるにはあるが、いわばちょっと、天下り式により大きな基数を考えていくといった具合であるように感じるのです。
「後継者関数」ではなるほどωの濃度まではいけるけど、どうも「連続体」の濃度以上にいくためにはもうどうしても「冪集合」に頼らなければならない。
まあ、こんなところが順序数の算数と基数の算数の構成の仕方がちがっている原因なのかもと思ったりしています。
ここらあたりは自分なりにこれからさらに考えてみるつもりです。
4.帽子パズルの内容について
帽子パズルでは有限な集合で成立している定理を無限な集合へと拡張するのが一般的なパターンのようです。
その「拡張」の正当性を担保するのが「parity function」だったり、「群構造」だったりするわけでこれらの発見は帽子パズルという領域に対し重要な洞察となっています。
そのような重要な洞察がいくつもあったけど、わたしとしてはすこし「人工的な感じ」はしますが、

Theorem 2.3.2.
|A| = (k−1) + k^(k^(k−1)) , |K| = k , V : complete bipartiteで分割のサイズはk−1とk^(k^(k−1))となっているような同時発言型パズルにおいてminimal predictorが存在する.
という定理が一等気に入っています。
当たり前のようであってしかも、なにか帽子パズルの思考に本質的なところがあるように感じるからです。
ちょっと、整数論の「鳩ノ巣原理」みたいなカンジがあります。
帽子パズルと集合論の関係に関してもうひとついえば「同時発言型」パズルと「順次発言型」パズルの「集合論的取扱い方」のちがいについてさらに考えれば「本質的な差異」を統一的に取り扱う観点が発見できるかも、と思いました。

5.その他
たとえば順序対の定義にかかわって、 (x,y) ={{x},{x,y}}と定義するというテクニックのよさを鑑賞したり、カントール対角線論法というアイデアについての問題点をとりたてて議論することも面白いのではないかと思っています。
数学のアイデアやテクニックのディーテイルについて鑑賞したり議論したりすることはその領域の問題状況を把握するうえで効果的だと思うからです。
ですから講義のなかで上のような事例についての言及が少しあればよかったかな、と思いました。

6.勉強会の理念について
数学の「ええ、なんで?」「あっ!そうか」のこころは俳句や和歌、和算に通底する日本のモノの「アッハレ」のこころへと繋がるものがあると思います。
日本の文化だけではなくひょっとすると「印象派」の絵画や音楽にも通じるかもしれません(これはちょっといいすぎかも)。
数学であたまとこころを鍛えればその人はそれだけいっそう「アッハレ」を発見しやすくなり、人生を豊かにすることができます。
そういう意味で裏難波大學において数学やその他の文化に接することその人にとって大層意義のあることです。
わたしはこの集中勉強会を「集合論勉強」の一つのマイルストーンとして今後キューネンのset theoryに挑戦します。目指す頂は「巨大基数の理論」です。
この勉強会に参加できて本当に良かった。」

 

5つ目


「大学数学を全く知らない状況での参加で理解できるか不安でしたが、後半になるにつれ理解できるようになっていきました。
正直なところ、第1回〜2回くらいまでは、「勉強会の難易度が自分に合っていないために、得るものが無いまま終わるのではないか」という思いがありました。
しかし、回を重ねるにつれ少しずつ数学の勉強の仕方がわかるようになり、楽しめるようになりました。
自分が証明を追っていてつまずく時は、証明中に用いられている既習の語や記法を理解できていなかったり、まだ馴染んでいないのが原因なのだと気づいたのが理由の一つだと思います。
証明のどこかのステップでわからなくなったとしても、「時間をかければ理解できるだろう」、「この記法にもう少し親しめば理解できるだろう」などと思えるようになりました。
勉強会参加前に比べると、教科書の読み方も進歩したと自分では思っています。
述語論理だけを学んだ状態だったので、数学における論理式の使い方に全く馴染みがなく、当初は論理式で書かれた公理を何度読んでも何が書かれているのか全くわかりませんでしたが、今ではそれなりに把握できていると思います。
実際、勉強会参加以前はイプシロンデルタ論法による極限の定義の論理式を見ても何を意味しているのか全くわからず、自然言語で書かれたものと見比べても駄目でしたが、今では「自然言語で書かれたほうが長くてわかりにくい」と思えるようになりました。
強いて改善点を挙げるとすれば、時間の制約があるためどこまでできたかはわかりませんが、新しい定義や記法が導入された時に具体例をもう少し混じえて説明してもらえれば、自分のような初学者には理解の助けになったかと思います。
参加者の層が雑多なため難易度を下げすぎるわけにはいかないという制約の中で、自分のような初学者にも進歩できた部分があったので本当に良かったです。
ありがとうございました。」

 
私の感想


もう十分に感想のようなものを書いてきたような気がしますが、まだまだ思ったことを書いていきます。
私自身学んだことと、今後について書きます。

今回たくさんの学びがありました。
それを数学に関するものと、裏難波大學に関するものに分けて説明します。


・数学的なもの

 

連続体仮説の否定のモデルを作る強制法(Cohen forcingのこと)そのものは修士1年の時にセミナー活動を通して勉強しましたが、
なかなか自分の中でのしっかりとした理解というのにはたどり着けませんでした。
そうならなかったのは強制法そのものの理解もあるし、数理論理学そのものの知識も不足していたからだと思います。
そんな自分にとって2018年は強制法を学びなおす絶好の機会に恵まれた一年でした。
数学カフェの公理的集合論回(はじめて東京に行く機会にもなりました。もう4列シートの夜行バスには乗りません。。。)、九州大学での集合論集中講義にこっそり参加(はじめて福岡に行く機会にもなりました。)、母校での強制法を扱った授業にこっそり参加と3つもある程度長時間にわたる勉強会がありました。
これに参加してみて理解力はある程度上昇したものの、やはり集合論の基礎がまだまだ足りないと感じていました。
そしてそのために今回の勉強会の参考テキストのようなものをじっくり読むことですが、いかんせん帽子パズルが楽し過ぎて進まない。。。
ならば位相空間論自主ゼミのように自分を発表する立場に追い込まねばと考えていました。
今回時間的な都合もあって、集合論と論理学の基礎を扱った2章はあまり発表することはできなかったのですが、予習自体はしていたので幾分か理解は進みましたし、やはり自分はこのようなスタイルでの学習が一番効果的なんだとも分かりました。
今現在、後輩の修士学生の強制法ゼミの世話役みたいなことをしていますが、ある程度後輩たちの質問に答えられているのはこの勉強会があってのことだと思います。

帽子パズルに関してはそれこそ上記に書いたような論文間違えているかも騒動(今後たくさんあるんだろうな)があったことでかなり理解力や説明力があがりました。
またこれが終わった後の自分の変化として、帽子パズルに関する話題ならば準備なんかなくっても3時間4時間も話すのが可能になっていました。
つまりその中の理論や議論の進め方が自分の中に染み込んだ証だと思います。
そして自分が自信を持って話すことができるテーマができたのは非常に嬉しいことでした。この勉強会のために作り始めた勉強ノートを1つの出発点にして、より多くの面白い帽子パズルの情報を発信していけたらと思っています。

 

・裏難波大學に関するもの


今回が今まで主催した中で初めての対外的かつ長期的な勉強会でした。
勉強会の参加する人たちの目的が「深く学ぶこと」「浅く学ぶこと」「学問関係者との交流」の3つにあると捉えて、それぞれを参加者ごとの求める配分で上手く与えていければ、より良い勉強会になると仮説を立てました。
しかし人数が多くなってしまえば、個々の参加者に目を向けることが難しいので、私一人で準備から本番までやるようなものならば今回のような人数・規模が最適・限界だっとと思います。
もちろんミスマッチを無くすため参加者の事前知識や数学的経験を明確にすれば、そういった目配りも多少は減らすことができるかもしれませんが、今回のように「誰でもOK」な形の中では良い勉強会だっと思います。
つまり参加基準を明確し、明確なシラバスを作り、それに沿って予告通りに進行すればもう少し規模の大きい勉強会もやっていけるかもしれません。

 


今後について

 

私自身はしばらく自分自身の学業で忙しそうなので、コンテンツ提供側に回るのは難しそうというのもありますが、数学以外の学問(今考えているのは哲学)でも今回のような長期にわたる勉強会をやりたいと考えています。
もちろん私は数学においてさえ狭い範囲でしかコンテンツを提供できないので、それができそうな人にお任せすることになります。
今回は運営、進行、コンテンツ提供と全て1人でやったわけですが、その経験を活かして、運営・進行の面からサポートしたいと思います。
また、自分の専門の部分で私自身にも学びや発見があったように、コンテンツ提供者の方にも益があるような勉強会を作りたいです。

1年間立ちのみ屋で数学自主ゼミをやってみた

2018年の4月より1年くらいかけて(途中私の祖母の入院とかなんやらで2か月くらいのお休み期間があったはず)
位相空間論・測度論の復習自主ゼミを裏難波大學主催という形でやってきました。
当初はそういう団体名もなかったのであくまで個人的な活動って位置づけでしたが、途中からそういう形に変えました(宣伝もしやすい)。

 

1年間のまとめ


最初は私のTwitterアカウントにて募集をかけました。
上級者だけでも、初級者だけでもつまらないのでいい感じのバランスで集まらないかなと密かに期待していましたが、見事に思惑通りに。
ゼミをする場所としては、最初なんらかの会議室やコワーキングスペースを借りてやることも検討しましたが、
あくまで私の復習に付き合ってもらっているだけので参加費をとるのも悪いなぁ、でも会場費くらいはもらわないと継続的にやっていけないなぁとも思っていました。
数学の自主ゼミって継続的にやらないと効果が薄いんですよね。。。
どうしても期間が開くと人間忘れちゃうし、そうなると毎回復習にある程度時間がとられてしまう。
こういう活動をやっていると、申請さえすれば(部屋次第では申請なしで)使える講義室がたくさんある「大学」って環境ってすごく良いものなんだなと実感します。
その折に両親が経営する立ちのみ屋さんを手伝うことになり、その営業時間外でも経営に支障がなければ使えることになりました。
そしてその店舗でイベントをすることもあって、そのために椅子やホワイトボードを置けることになり、参加者を少なくすれば、参加費なんか頂かなくとも継続的に開催できるのでは考えました。

なので4人の応募があったのでそれで募集は締め切って、このメンバーで継続的に続けていくことにしました。
うち2人が知り合いで2人とも数学的な議論に慣れているのでゼミが迷走しづらいという点ですごく心強かったです。
もう2人はまったくの知らない方で、事前に数学科出身でないとは聞いていました。
このメンツだと当初の思惑通りといった感じでしたが、蓋を開けてみると数学科出身ではないもののそれぞれご自身の専門があってそういった方に興味を持ってもらえたのは2018年の中でも運が良い出来事だったと思います。

そもそもなぜ位相空間論・測度論をテーマにしたかというと、2018年、つまり退職してから博士課程進学を意識していたので、サラリーマン生活の中で忘れてしまっているように見えた数学の基礎的事項や証明の進め方などを進学までに取り戻しておきたいと思っていたからです。

テキストしては、見知らぬ相手にテキストを買わせることに抵抗があったので、PDFをネットで探すことにしました。
幾何学入門』というタイトルのPDFなんですが、2019年現在も更新が続けられていて内容も変わっています。
昔は位相空間論の内容もふんだんに盛り込まれていたのですが、久しぶりにURLから見に行くと素朴集合論だけになってました。。。
そのようなタイトルでしたが、幾何学に向けた話はテキトーに飛ばしてこちらが知りたいテーマだけやっていく形にしました。
記法や証明への慣れのことも考えて素朴集合論から始めることにして、それは大体1か月半くらいで終わらせ、そこから距離空間位相空間へ進みました。
毎回2時間から長いときは3時間くらいやっていたのですが、位相空間論が終わったのは2019年2月くらいになってしまいました。
しかも分離公理や連結については飛ばしてしまいました。
測度論からは『ルベーグ積分入門』(吉田 伸生  遊星社)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B0%E7%A9%8D%E5%88%86%E5%85%A5%E9%96%80%E2%80%95%E4%BD%BF%E3%81%86%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%A8%E6%BC%94%E7%BF%92-%E5%90%89%E7%94%B0-%E4%BC%B8%E7%94%9F/dp/4434078755/ref=la_B004BDJY5O_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1555200561&sr=1-1

を使うことにしました。さすがにこの頃はテキストを買うお願いもしやすくなってましたし(強制もしてないです)、ネット上のPDFはたとえ専門家が書いていたとしても信頼度は下がると考えていて、
そこを疑って読む労力を無くすため(良いPDFを見つけることができなかったんです。。。)測度論からはテキストをベースにすることにしました。

振り返り


良かったことを中心にまとめてみました。
・発表者を自分に固定したこと
自主ゼミって私の経験上大抵空中分解するんですよね。。。。
継続するのが難しい理由として、コンテンツ、すなわちこの場合だとキチンとしたゼミ発表を毎回用意することが難しい点にあります。
もし全員の数学に関する知識や能力が同じくらいならば発表者を毎回変えることで負担を減らしたりもできるんですが、今回は自分に負担があるのも覚悟の上で、というより自分の復習がこちら側のメインの目的なんだから、発表は全て私に固定することにしました(まぁ当時無職の私の一番時間的余裕があったんですけど。。。)。
ともあれ私の身が空いているならば毎回開くことが出来ましたし、そのおかげである程度質を維持しつつここまで続けてくることができました。

 

・少人数で進めたこと
自主ゼミを継続するのが難しいもう1つの理由として、場所や時間の確保です。
同じ大学の学生同士ならば場所に困ることも、ある程度生活リズムが似ていることもあって時間を確保するのもやりやすいと思います。
しかし、1人でも非学生、社会人を混ぜて、一般の貸しスペースを使うとなるとかなり難易度が上がります。
今回の人数ならば立ちのみ屋に座ってギリギリ入る人数でした。
なのでこれ以上の人数では場所や時間に悩むことなく続けてくることは出来なかったと思います。

当初知らなかったんですけど、TwitterのDMってLINEのようにグループを作ったりできたんですね。なので連絡手段はそれを使っていました。
4人だと話題も流れていきにくいしちょうど良かったと思っています。
またこれくらいの人数だと(数値化は難しいですが)仲良くなるのも早かったと思います。
そして特に後半にはそれぞれ意見を出し合ったり、数学以外の話で盛り上がったりと自主ゼミ以外の面でも楽しい勉強会になったと思います。
あとは夏ごろに私が「関西すうがく徒のつどい」で発表することがあって、そのプレゼンリハーサルに付き合ってもらえたりしました。
プレゼンの質が向上したのは、このリハーサルあってのことだと思っています(本番自分のせいで結構失敗しちゃったんですけど)。

あんまり良かった点ばかり挙げていては良い振り返りとはいえませんけど、この活動に関しては悪かった点はなかったと思っています。
うーん、しいて挙げるならば、もう少し資料作りとか頑張れた気がしますが、それをやってゼミの内容が薄くなっては本末転倒なので、これくらいで良かったかなと。

 

今後の展望


とくにめちゃくちゃゆっくり進んだわけではなかったんですが(なんだったら年末も長時間やったりしましたし)、測度論にはほとんど手が付けられませんでした。
進学してすぐは私も忙しいので一度休止して、こちらの週間スケジュールが把握出来たら、4月後半からでも再開させようかと思っていましたが、意外と自分の研究以外の用事も忙しく、同様の形式では少なくとも春学期は続けていくことが難しそうでした。
もちろん私が率先して発表する形式でなければ続けていけそうでしたが、私以外の参加者も発表を義務付けられないからこそ(つまり自身の時間が空いている限り)参加していただいたので今さらその形式を崩すわけにもいかず。。。
もちろん他の発表者を探してくることも考えたのですが、それも(今時点での自分では)難しそうだったので諦めました。
なので裏難波大學の活動としての自主ゼミは4月で一度休止することにしました。
数学以外の単に主催・運営するだけの(つまり私がコンテンツを提供しない)イベントを優先してやっていこうと思っています。
そして他のイベントも徐々に省エネ化していき、研究生活のペースもつかめてきたならば(そういう風になるんですかね???)、また再開していきたいと思います。

もちろん測度論から再開して、より発展的な内容に踏み込めるような、そして継続的に開催していけるような自主ゼミにしたいです。

 

最後に何枚かスマホに勉強会の写真が残っていたので張り付けておきます。

この写真とかは進捗報告を兼ねて裏難波大學Twitterアカウント(https://twitter.com/UraNambaUni)から発信していたものの一部です。

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大人向け数学教室を始めてから半年経ちました。

2018年9月より副業として始めた大人向け数学教室が、この記事を書いている2019年3月あたりで半年が経ちました。

じゃあなんで投稿が5月になっているのとかは聞いちゃダメです。
始めたキッカケや以前の途中経過などは以下の記事を参考にどうぞ。

souji0426.hatenablog.com

souji0426.hatenablog.com

 

当初2019年4月までに、すなわち博士課程に進学するまでに、この数学教室での月あたりの平均収入を自分自身のお小遣いくらいにするのを自分の中での小目標にしていました。ここでいう小遣いは4万くらいで、交際費・交通費・酒代・散髪代・服代などが含まれます。でもほとんどお酒代ですね。。。20歳になってから医者に止められない限りは毎日飲んでいるので生活の一部になっています。


小目標を達成できたので自分の中での振り返りや今後のことも考えたりするために記事を書くことにしました。公開しない下書きばかり増えている状況ですが久しぶりにきちんと書き上げて推敲して公開してみます。


大人向け数学教室の需要が増えているのか減っているのかは定かではありませんが、このような仕事にお客さん側・教えてみたい側として興味ある方は多いと思うので、この記事が少しでも参考になればと思います。法人化されている大人向け数学教室は多いですが、そこでの就業体験やお客様の詳細な感想などはあまり検索しても出てこない(守秘義務?)ので、自分がやっているのはあくまで個人的なバイトといった感じなのでどこまでみなさんの参考になるか分かりませんが、書いてみることにしました。

 

以下のような内容でまとめてみます。


今現在の状態


今現在1時間3000円で教えています。
これは私の自宅を使用した場合で、ここ以外の場所ならばそこまでの私の交通費・そこまでにかかるざっくりとした時間給などが発生します。ざっくりとした時間給とは例えば私の用事の帰り道の途中の駅近くなら0円だったりします。そこらへんは私のスケジュールによって様々です。


基本的には毎回の授業時に私とお客様のスケジュールを照らし合わせて、こちらはなるべく時間がかからないように、お客様からはなるべく経費がかからないように提案しています。


今現在週に3から4回教えているので私のお小遣い(主に飲み代)としては十分です。
始めた当初は授業場所の候補は営業時間外の両親の立ちのみ屋か、コワーキングスペースや喫茶店に出向くの2つしかありませんでしたが、2019年1月より私の自宅の空き部屋が使えるようになったので、お客様さえ良ければなるべくそこへ来ていただくようにしています。

 

申し込みから初回授業までの進め方は副業開始当初から変わっていません。
まずはHP上の記載項目に沿ってメールを送信していただいて予定を合わせて、そのあと1時間ほどカウンセリングをして目的や興味を確認して、後日無料体験授業60分を一度やってみるという流れです。最初はなるべく体験授業までもっていこうとしていたのですが、回数を重ねるうちにカウンセリングの段階で申込者様の希望とこちらが提供できるものが一致していないことを説明して体験授業までいかないことも増えてきました。また私のコミュニケーション能力が低いこともあるのですが、メールの段階で意思疎通が難しい場合もあってメールの段階でお断りしたことも何件かありました。。。

しかし徐々に自分が自信を持ってサービスできること・苦手としていることが具体的になってきましたし、お小遣い稼ぎとしては効率よく・ストレス少なめで働けていると思っています。

個々の事例


ここでは今現在、4回以上継続的に授業を受けて頂いていたお客様の中でいくつかの事例を簡単に紹介したいと思います。ある程度の回数の授業を受けて頂いたお客様には謝礼をお渡しして感想文などを書いてもらっていますので、それと合わせて私視点で書いてみます。順番に特に意味はありません。

お客様側の感想一覧はこちらです。

お客様の声一覧 | 裏難波大學

年齢・性別の組み合わせでどの事例がどの感想文なのかは判定できると思います。

50代・男性


一番最初のお客様でゆえに今現在一番多くの授業をしています。
当初は高校数学、とくに微分積分を学びたいと聞いていましたが、2回ほど授業をしたさいに微分積分の計算ができるようになるというよりは微分積分を理論として理解したいという動機であることが分かったので方針を変えました。
冒頭に載せた記事でも書いた通りお客様の理解力をこちらが把握し、そのうえで効率の良い進め方として数学科のセミナー形式を提案しました。
なのでお客様の合意を得て、まずは現代数学の共通言語、そして基礎である素朴集合論を私が講義形式で教えました。多くの教科書と同じように「集合」「写像」「二項関係」「集合族」とテーマ順に進めていき、その中で宿題として証明問題を出し授業開始時にその宿題の証明を私に見せてもらいながら、数学的内容を人と共有するためにはどのように議論を進めればよいのか・どのようにテキストに書いてある証明を読んでいけばよいかなど、(自分の中でも当然試行錯誤中ですが)数学の勉強の仕方を教えているといった形に落ち着きました。


そしてある程度回数を重ねたあたりからお客様が証明を組み立てることができるようになったと感じたので、相談のうえ素朴集合論の一つのテーマ「濃度」に入ってからは授業する役を交代しました。今は毎回お客様と同じテキストを用意して予習してきてもらい、私に対して予習してきたことを発表してもらっています。
微分積分を理解するのに素朴集合論が必要かどうかは人によって議論するところでしょうが、大学数学科初学年のつまづきどころ、ε-δ論法が理論の理解には付いて回るので、そこでお客様に楽しみながらそのハードルを越えて頂くための最短ルートであると思いました。もちろん素朴集合論も全てやるわけでなく、解析学のテキストで要求されそうなものを取捨選択したつもりです。


今のところこの形式での進め方にお客様も満足して頂いているようです。
「教えられるくらいになれば理解は進む」とよく言われますが、今のところ2人ともそれは体感しています。そういった現代数学の基礎の触れていることによってお客様も当初の微分積分以外にも様々なテーマに興味を持っているようです。なので「濃度」が終わった後、どのように進めるかはまた相談すると思います。
もしかしたら自分自身で数学書を読み進めれるようになったことで、そこで教室に通うことを終了するかもしれませんが、私の目標はそこにある、つまり「お客様が独立して数学を学べるようになる」が目標だったので、私としては喜ぶべき結果の一例になります。

40代・男性


最初にプレゼンイベント「裏難波大學開講日」に来て頂き、そこから数学教室に通うことになったお客様です。このイベントに参加される前から大学以降の数学への興味はお持ちでした。そこから「ガロア理論」を学びたいということでしたので、まずはそれに必要な基礎知識の習得・証明能力をあげることを目標としています。
上記の事例と同じく素朴集合論から進めて、ある段階で代数学の教科書に移りたいと考えています。
私自身ガロア理論は専門でもないし大学の授業で受けただけで教えることは難しいので、1.のお客様同様ある程度の段階で生徒・講師の立場を逆転させ一緒に勉強していく形に変えていければと考えています。


当時私が出身大学へ毎週行く用事があり、お客様はその大学近くでお仕事をされているということで、私のその用事に合わせて大学近くのファミレスで毎回1時間授業をしていました。その際は小さなホワイトボードを持参して教えています。
2019年2月よりお客様がご自身の用事で忙しくなったことと私がその大学へ行かなくなったので今現在授業は停止していますが、4月より私がその大学に進学することになっているので再開させるかもしれません。

20代男性


2018年11月時点での申込者の学びたいテーマが大学以降の数学に偏っており中学・高校数学を教える経験を積んでおきたいと4回分の授業を無料にしたモニターを期間限定で募集しました。その中から募集していただいたお客様の1人です。


お客様の申し込み時点での理解力を見て、相談のうえテキストを選定し高校数学を、お客様が教えてほしいと言った単元優先で授業形式で教えました。
しかし教えていきながら情報を集める中で、中学・高校数学を教えてくれる良いコンテンツは世の中にたくさんあって、経験不足な自分が授業形式で教えるよりはその情報へのアクセスだけ教えて質問だけ受け付ける形でも良いのかなと思いました。
私が経験不足と自認している理由として、数学科では教員免許のための授業を一切受講しなかったし、中高生を教えるような塾講師のバイトも1年間しか続けませんでした。
よって一般的な数学科生よりも高校以前の数学を教える経験・知識が不足しており、また。以下の記事に書いた通り大学受験をしていないことで一般的な数学科生よりも高校数学の経験値が不足しています。

 

souji0426.hatenablog.com

 

その苦手意識に向き合うためにもと始めたモニター募集だったのですが、上記のように考えてしまったのと、お客様も自身の苦手意識から高校数学を選択していましたが、素朴集合論へ興味を持ったことから、4回の無料授業を終わった後からは素朴集合論に切り替え上記のお客様と同様の形式で進めることにしました。
ただ素朴集合論を学んだ後どのような現代数学に進むのかは具体的には決まっていないので、授業をしながら色々なテーマを提示して何かに興味をもってもらえるよう努めていこうと考えています。また高校数学はお客様ご自身で自習することになりましたが、共通のテキストを持っているのでこれ以降もそのテキスト関連の質問は受け付けており、数学の難しさ・学年によってコースを分けていないことを活かして色々な質問に柔軟に対応していきたいと考えています。

10代男性


2019年4月で2年になる高校生です。希望内容はもちろん高校数学です。
申込者はその叔父様でした。副業開始時点で全く予想しなかった申し込みだったので当初はかなり悩みました。なぜ「大人向け」にしたかというと塾講師経験(短かったですが)から自分が被保護者のような児童を教えるのは難しいと考えていたからです。
難しい理由として支払い一回に対して、生徒とその保護者の2人を満足させなければいけないことです。もちろんがそれが塾の仕事であると思いますが、私自身両親の立ちのみ屋の仕事を手伝う中でなぜストレス少なく仕事できるのかを考えたとき、お店にきたお客様に飲料料理提供しそれに満足したならば代金をいただくだけというシンプルさにあると思いました。もちろんシンプルだからといって儲かるわけではないですが。。。

申し込み者である叔父様が数学に対して理解があり、目的は成績アップよりも「数学を専門に勉強している人の傍に置くことで何かしら彼の見識が広がれば」ということでした。またこのブログなどの私が発信している情報も見て頂いていたようで、その上での依頼ということだったので引き受けました。


思春期の難しい時期の教育に一切詳しくない私が対応できるのか不安でしたが、今のところ2週に1回私の家に来てもらって1時間本人が提案した単元(主に学校の授業の復習)を一緒に勉強しています。
その叔父様の方は裏難波大學の勉強会に参加して頂いていたので、その勉強会後にたまに振り返りなどをしながらご両親や本人の反応を確認しながら進めてきました。
私自身を指名しての依頼で、さらに見知った相手だったので他のお客様と同じように対応できているわけですが、今後、中学生・高校生を教えることはなるべく避けると思います。


ちなみに最初は私に教わるより予備校といった高校数学専門の講師がいるような塾に行くこともおススメしましたが、当人や通学先の学校を理由として、予備校などに通うのが難しい事情も聞いていたので私も何か手伝えないかとやる気になりました。
ですが本人のことも考えてなるべく早く大学受験専門の家庭教師なり予備校・塾なりに通うことを勧めています。

30代女性


IT系エンジニア職につく方で、趣味と実益を兼ねて大阪大学の一般公開している「暗号理論」の授業(というより講座かな)を受けているとのことでした。
もちろん暗号理論は私の専門でもないし、私の学部・院ではその授業もありませんでした。ただカウンセリングをする中で、講座を受けているので授業が必要というよりは授業で分からなかったことの復習に付き合ってほしいということでした。
主に分からない内容について詳しく聞いていくと、暗号理論はもとより代数学での用語や数学でよく使う言葉などが分からないために講座の内容についていきにくいとのことでした。
なのでその講義資料を参考にして、他のお客様と同じように現代数学は素朴集合論を用いて記述されていることが多いことを説明し、まずは集合・写像二項関係の解説をすることにしました。
2か月間ほど週に1回ペースで授業を行い、一応この3月で授業は終了することにしました。理由としては、先述した講座と仕事が忙しくなり時間がとりづらくなったことと、以降の学習に対しての目標の具体化をお願いしたからです。
暗号理論は当然分野として幅広く、それぞれの暗号でも使用する数学概念は様々だと思います。カウンセリングの中で「無期限に暗号理論について幅広く勉強していきたい」というよりは「ある時期までに特定の暗号技術を実装・それに関するライブラリを使用できるようになる、そして応用力をあげるために理論面での理解をしておきたい」
が目標であるご本人から聞くことができました。
しかし、その「特定の暗号技術」が3月時点ではご本人の中で定まっていない状況だったので、今後の授業を効率的に進めるためにも、4月以降はその講座に集中することにして、大きな暗号理論の中のどの部分をゴールにするかを定めてもらうことしました。
3月半ばの授業を最後に授業は休止していますが、半年後に講座が終わるので、そのあとに再開させる可能性があります。


授業する場所は私の自宅でも難波の立ちのみ屋でもなく、大体が本町にあるコワーキングスペースでした。平日のお客様の仕事終わりに教えることが多くお互いにアクセスが良い場所ということでお客様が普段利用されているこちらを提案して頂きました。
暗号理論は私自身も興味があったので一緒に学んでいきたいですし、かつお客様にとって今後のための経験になるよう努めていきたいと思います。

 


今後の目標や方針・感想・振り返りなどなど

今後の目標


まずは今後の目標から。
先に書いた通り、お小遣い稼ぎとしては満足しています。
しかし今後の不安定な学生生活のことを考えると、より安定性はあげていきたいです。
じっくりしっかりとお客様と信頼関係を作りながら3年後には自分の中でのより大きな収入源にできればと考えています。学生生活が終わった後、どうするかはまだ考えがまとまっていませんが、今のところ他の講師を雇ったり法人化したりは考えていません。
起業するのは簡単ですが、私自身がこの職業での起業に特に興味を持っていないからです。少ないサラリーマン経験から、人に働いてもらうこと・複数の人をまとめて1つの目的に向かわせることなどの難しさを感じたので、起業するにしてももう少し実力をつけていきたいと思います。
また今程度の売り上げならば法人化するメリットもあまりないと思います。
起業が目的になって中身がおろそかになってもつまらないですし。

今後の方針について


今のところお客様からは高い評価を頂いていると思います。
まだお1人しか数学科セミナーっぽい形式、つまり生徒と先生役を入れ替えた発表形式、に到達していませんが、他のお客様も徐々にその段階に進んでいくでしょうし、より面白い数学を一緒に勉強していきたいです。


この記事を執筆(ブログを書く行為は「執筆」でいいのでしょうか?)している時点で、ここまで教えた時間数(大体70時間)と数学教室に関係した活動、HPやこういったブログ執筆、カウンセリングや体験授業も含む、を数えると100時間を軽く超えていました。最初に数学教室の基本料金を設定するときに、「こんな素人に他の数学教室と同じような料金を設定するのは申し訳ない」と「1人でやっているから企業と比べてサービスの点では劣る」といった点から、3000円という控えめな設定にしました。
しかし1つの経験不足からの配慮は、100時間を超えたことによって、もうする必要はないと思いましたし、学習場所としての選択肢も立ちのみ屋だけから私の自宅など選択肢が増やせたことによって、最初よりは改善できてきたと思います。
なのでこの2019年4月より、基本料金を4500円にあげることに決めました。

それに合わせてHPも更新しました。

数学教室 | 裏難波大學


自分の周りにいる経営者・社会人歴が長い方々に基本料金に関して相談した時、ほぼ全員から「安すぎる」と言われていました。
経営者目線から「安ければ逆にサービスに対して不安を持たれてしまう」という意見が多かったです。確かに自分だって中古ゲームをAmazonで買う時にあまりに他のゲームに比べて安いものがあれば購入は避けて、大体真ん中くらいの値段のものを買います。
それは事実最安値のゲームを買ったときに動作不良を起こした経験が多かったからです。前職の自社の主力商品の値段を3桁万円から4桁にあげたら契約数が上がったという話もそれに通じているところがあるんでしょう。
なので業界内の平均料金から安いのも、あまり良いことはないなと思っていたのでこれを機にあげたいと思います。

料金をあげることは上記の考えから予定していましたが、料金の上げ幅・上げる時期について数学教室開始時には未定でした。その際にもう1つの助言として「料金改定(上げる下げる・頻度関係なく)をすることはあまり良くない」というものもありました。
それもそれぞれの経営経験からの助言で、自分にとって非常に納得できるものでした。
なのでこの4500円という料金設定は同じように自分1人で法人化もせずやっていく中では変えないようにします。つまり私が博士課程学生の間は変化はしないです。
料金以外については今まで通りでやっていこうと思います。

 

ただ最近、学問的なサービスの価格ってどれくらいなんだろう?という疑問がずっとあります。つまりこの1時間4500円も高いのか安いのか適正なのか自分でも分かりません。一応業界の価格に比べて安いので値上げすることにしましたが、そもそも業界内の値段ですら正しいのかどうかも自分には分かりません。。。
数学教室に限らず、これから様々な学問が関わるような催しを開いていきたいんですが、その時も参加費とかとりますよね。たとえこちらが生活に不自由がなくともボランティアでやるのはダメだというのは分かってるんですが、じゃあいくらがいいのか?については答えがでないままです。
もし適正価格というものが存在しそれだけの収入で足りなければ、案件数を増やすか、別の仕事にも手を出すなどで補えばいいと思うので「数学を教えること」の値段が低くてもこちらとしては問題ないのです。ただ適正価格を知りたい。
なのでこれまで同様色々なイベントや勉強会を運営したり、他のイベントに参加したりしながら自分なりの基準、人に説明しても納得してもらえるような基準を作っていければと考えています。

 

感想について


始めた当初は「本当にお客さんがきてくれるのかな???」と心配だらけでした。
しかし体験授業に進むか、もっと言えば継続的に通っていただけるかは難しいですが、メールはたくさん頂いていてうれしい限りです。

また最近様々な数学関係者の方がこの活動を暖かく見守っていただいていると知りました。私よりもはるかに経験豊富な数学関係者から応援・支持してもらえるのは、こうして自分が数学に対して感じたことを発信し続けていて、かつそれに対して全部でなくてもある程度・少しくらいは共感・理解してもらえているからだと考えています。


今回は開始から半年くらいという節目なのでこのような記事を書きましたが、裏難波大學の他の活動も含め今後も気付いたこと・考えたこと・感じたことなどは(執筆スピードは非常に遅いんですけど)公開していきたいと思います。
また活動を続けていけば、専門家・非専門家関わらず、批判や意見など様々なことがあるかもしれませんが、なるべく悪いことは起こらないよう、また起こっても適切に対応できるよう努めていきたいと思います。

 

そしてこういった活動を通して、自分の数学に関する能力もまた一段とあがったように思います。昔から一人で証明していくことはまだなんとかなっても(なっていると思っていても)、人と数学に関する議論をすることに非常に苦手意識がありました。
もちろん、裏難波大學の活動を通してたくさんの自主ゼミや勉強会・プレゼンをやってきたのも関係しているでしょうけど、とくに数学教室の中で生徒さんが何で悩んでいるかをくみ取っていく中で少しずつ出来るようになってきたのかなと。

 

他にもたくさんの数学教室がある中で料金の安さ以外にどう差別化するかを考えてきました。大学から本格的に数学を学びだして、自分一人で、他の大学生のように周りに数学好き(ここではあえて未定義にしておく)がたくさんいるような状況でなかった(Twitterで数学関係者と絡んだりし始めるのも3回生になってからでした)中で、数学を学ぶことに対して向き合ってきた経験を何とか形にできないかと。
ちなみにそのような状況だったことに対して何もネガティブに考えているわけではありません。そのような大学に入ったのもそこまでの自分の実力だったわけだし、総合的に見れば自分のような「のんびりマイペース」な人間にとっては良かったと思っています。お客さんはおそらく自分と同じような状況・立場からスタートするわけで、そういう点からも自分にとって今の教え方・サービスなどは向いているような気がします。
もちろん他の数学教室にそのような人もたくさんいて、同じような形式での対応もしているとは思うのですが、なにせ所属講師に関してはその経歴・専門分野くらいしかわからず、授業風景の詳細も講師が何を考えて授業しているのかも(私の調べ方が悪い可能性大)正直見えてこないです。いや、あるにはあるけど1つの授業に対してのお客様と講師双方の意見ってのがなかったかな。多分法人化されてるからゆえにコンプライアンス的に講師が外に発信できることも限られているのかも。
※ここに引用した感想文は公開することの了承は得ております。

 

まとめ


博士課程に進学するまでになんとかお小遣いくらいは稼げるようになっておきたいと始めた大人向け数学教室ですが、ある程度自身の専門性を活かせていて、個人的な副業ゆえにお客様と近い距離感で授業を進めていけるので非常にやりやすいです。

 

講師として同じようなことを始めてみたい人に言えることは、個人・どこかの企業でのバイト・正社員、とちらも一長一短だと思います(当たり障りのない意見でごめんなさい。。。)。個人ならお客様や仕事を選んだりできる分、HP作成から宣伝まで自分一人でやっていかなくてはいけません。


雇われ系ならば、そういったことがない分授業に集中できると思います。
自分は最初いくつかの有名どころの数学教室のバイトの面接に行ってみて、自分にとって働きにくいなと感じる部分(環境・業務内容・契約内容などなど)があったので1人で全部やってみることにしました。今の時代、HPを作るのも発信するのも非常にやりやすくなっているので自分のような低ITスキルでもなんとかなっています。
あと大手ではどのくらいお客様をお断りできるのかは分かりませんが、個人ならばそれが可能です。大手の面接で聞いた話では、毎回教科書などを開いたりせずただただ数学専門家とおしゃべりしたいだけのお客様がいたそうです。たしかに私はお客様を選べるほど金銭的余裕があるわけではないです。そしてただおしゃべりするだけでよいならば、つまり授業準備などが必要でないならば、かなり楽な(違う意味で難しそうですが)案件だと思います。しかし私が現在欲しいのは「自分が数学を独学できるようになった体験をサービスに変換する技術」、そしてその技術の習得に対して試行錯誤した経験です。まだ背負っているものが少ないうちに(せいぜい自分のお小遣い程度で済んでいる間に)、そのことを優先したいと考えていますので、上記の理由も添えたうえでそういったお客様はお断りすることが1度だけありました。
上記の1件と、コミュニケーションがとれない以外の理由でお断りしたことはありません。
私がお断りするならばこのような理由になりますが、どうにも対応しづらいという時に断れるのが、贅沢な言い方ですがお客様を選択できるのが個人でやるメリットでしょうか。

 

生徒として興味のある方へ言えることは、他の数学教室に比べて講師の数が少ない分、というか私一人ですし、教えることができる数学の幅は非常に狭いです。
また世間的に流行っている学問に用いられる数学に詳しいわけでもありません。
私が提供できるのは、自分なりに試行錯誤して身に着けた(まだまだ改良中ですが)「数学書の読み方」や「数学の証明を他の人と共有する方法」です。
これが身につけば、私に教えてもらわなくとも一人で数学書を読んでいけるようになっているだろうし、仮に数学書を読んでいてわからないところがあっても、2つ目の能力によって私よりも詳しい専門家がいる勉強会に参加して分からない箇所を消化していけると思っています。
そういう状態になれば「1人で数学ができる」と言っても良いでしょうし、私はそれを目標にして授業やゼミを構築していければと思っています。
なので今時点での勉強歴に関係なく「現代数学」を趣味としてじっくりと始めてみたい方や、ご自身で勉強してみたい数学の分野が明確に定まっているがその基礎つくりをどこから始めればよいか分からない方などがこちらが想定する1番良い相乗効果を生み出せそうなお客様だと思っています。
もちろん、算数・中学高校数学の復習なども具体的な目標(この参考書を読み進めたいとか資格取得のためのテキスト通読など)を定めた上であればなるべく協力できるように努めていきますので、まずは気軽にメールを送ってもらえればと思います。


私もまだまだ勉強不足なことがたくさんあります。
数学の小さな1分野においても「はっきりと理解した」なんて言えるようにはなれない気がします。なのである程度節度を持ちつつも、先生・生徒という堅苦しい関係でなく、一緒に勉強する友達のようになれたらと思います。

 

まだまだ始めたばっかりで、本当の難しさのようなものはここから出てくるのかもしれません。
ここまでがラッキーパンチの可能性もありますから。
なので振り返りや反省も含めて今後も記事を書いていきたいと思います。